The Best of Everything2019/03/02 15:38

 トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズ、そしてソロ活動,部外活動(マッドクラッチ)―― すべてのキャリアを通じてのベスト・アルバム [The Best of Everything] をどうやって入手するか。
 今回は、輸入盤はネット購入した。そのようなわけで、届くのは大分先だ。
 一方、国内盤は、近所の音楽ショップで購入することにしていた。都心の大きなCDショップではない。楽器や楽譜、ほんの少しの映像やCDを総合的に扱う、近所の小さなお店である。
 予約もしていない。一種の賭けだった。いつもならTP&HBの作品など一枚もおいてくれていないような店に、[The Best of Everything] はあるだろうか?私はちょっとした「勝負」を挑んだ。

 結果は私の勝ち。一枚、平置きになっていた。少なくともこの郊外のお店で、一枚のトム・ペティのベストアルバムは買い上げられたのだった。

 あまり事前に情報を入れないようにしていたので、曲順を見るのも、現物を手にしてからが最初だった。そのアヴァンギャルドな曲順選択に、まずびっくり。普通、年代順に並べるものを、いきなりデビューから13年後の、しかもソロ名義である "Free Fallin'" ―― 最後から四曲目が "Even the Losers" ときている。
 何もかも、普通のベストアルバムとは違う、ものすごい代物に思える。
 そもそも、ソロも、部外活動も、メインのバンド活動も統一したベストアルバムにできるアーチストなど、ほかに誰がいるのだろうか。そんな素っ頓狂なことも、バンドメンバーや、ファンがごく自然に受け入れてしまうのが、トム・ペティという希代のミュージシャンのなせる技なのだろう。

 そして、年代をまったく超越した曲のを一連の流れで聴いてみて、なんの違和感もなく、混乱もないところが、ハートブレイカーズのすごいところだ。
 多少サウンドや声が変わっているはずなのに、ずっと変わらぬハートブレイカーズの価値観に統一され、説得力を持っている。しかも、トム・ペティのソロですらその流れから外れない。
 トムさんのソロ活動のせいで、バンドメンバーたち(マイクを除く)は疎外感を感じただろう。しかし、今こうしてオールタイム・ベストを聴くと、トム・ペティは結局何をしてもハートブレイカーズの一員であり、そこから離れることは決して無かったことが分かる。彼は、本当の意味でのソロ・アルバムを作らなかった。

 キャメロン・クロウ曰く、「静かなる巨匠,ひにくれた笑顔と職人的なギタープレイが印象的な」マイク・キャンベルの、その笑顔が目の前に浮かぶようだ。
 マイクは初めてトムさんに会って、友人,バンドメイトとなったその日から、この金髪の青年が、決して本物の意味の「ソロ」にはならないことを知っていたのかも知れない。私にはそう思えるのだ。

 さて、ロックンロール、ポップ・ミュージックを愛する人々よ。このベスト・アルバムを買うのです。ビートルズファンも、ストーンズファンも、ディランでも、キンクスでも、バーズでも、もっと若いバンドでも何でも良いけど、音楽が好きだったら、トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズは、ものすごくおすすめ。
 このオールタイムベストは、入門編としてこの上ない。時系列がちょっと混乱するかも知れないけど、かまうものか!このベストを手始めに、これからTP&HBを聞き始める人がうらやましい。
 強く、強くおすすめする最強音楽のザ・ベストなのだ。