伶楽舎 雅楽演奏会2018/12/17 12:56

 紀尾井ホールにて、伶楽舎の雅楽演奏会があったので、いつものように出かけた。

 今回は、芝祐靖先生による復曲「清上楽(せいじょうらく)」と、右方の舞楽「還城楽(げんじょうらく)」という古典が二曲と、一柳慧作曲の新曲「二十四節気」というプログラム。



 大戸清上(おおとのきよかみ)という8世紀末から9世紀ごろに生きたと思われる人は、笛の名手で、作曲もよくしたという。遣唐使として海を渡り、大陸で音楽を学んだが(音楽だけではないかも知れない)、帰路で嵐に遭い、漂着した先で、賊(海賊?)に襲われ死んでしまったという。
 なんだ、そのロックな生き方は…
 その清上が残した楽曲が、この「清上楽」で、昔はよく演奏されていたという記録があるものの、その後演奏されなくなった。記録はいくらかあるので、芝先生が復曲したという次第。
 道行,序,破,急とあるのだが、いずれもちょっと短いという印象があった。特に破と急が中途半端な長さに思えて、もっとたっぷり聴きたいような気もする。
 ともあれ、芝先生の復曲はいつもの安定感で、とても楽しい。

 右方の舞楽「還城楽」は、有名な演目だ。蛇を食べる西域の人が、蛇を見つけて喜ぶ様を舞にしたという、躍動感溢れる曲だ。学生の頃、管絃吹きと舞楽吹き両方で稽古したが、そのころから、吹きやすくて好きな曲だった。
 作り物の蛇の周りをぐるぐる回り、視線をやる様子も活き活きとしているし、蛇を手に持ってもかわいいのだ。
 しかし、ちょっと物足りなくもある。
 今年は、5月に芝先生の「瑞霞苑」を見ており、これが圧倒的に素晴らしかった。あれを思うと、何を見てもかすんでしまう。名作というのは、こうして認識されていくのかも知れないと、― 「還城楽」には気の毒ながら ― 思うのだった。

 後半は、一柳慧の新曲。
 「現代雅楽」というものを聴くたびに、今度こそは良い曲かも知れないと自分に言い聞かせるのだが、なかなかうまく行かない。今回も評価はイマイチだった。やっぱり古典が良いという結論になってしまう。
 「『雅楽』の語をアルファベットで英語表記にすると『GAGACH』となり、これは音名(ソラソラドシ)におきかえることができる」として、イメージを膨らませた曲だというのだが…そのアイディアは、バッハだけが認められるのであって、あとは二番煎じの陳腐なものでしかない。そもそも GAGACH とは綴らないと思う。しかも、じゃぁその音名がどれほど押し出されているのかと言えば、べつに大して活躍もしない。
 今回も結局、「現代雅楽」の評価は上がらずじまいだった。
 こたびも、負け戦であった…