When Prince Met Tom Petty2018/01/27 22:33

 「俺の二大スターは、デイヴィッド・ボウイと、プリンス」 ― と、いう同僚がいる。彼にとって、去年はショッキングなことが立て続けに起こったわけだ。
 プリンスが亡くなってから少しして、彼が私にふと話しかけてきた。

 「トム・ペティって……」

 ああ、あれを見たなと悟った。
 2004年、ジョージのロックンロール・ホール・オブ・フェイム授賞式。"While My Guitar Gently Weeps" ―
 プリンスのファンとしてこれを見て初めて、まともにトム・ペティを認識したというわけだ。



 何度見ても凄い。この曲に関して、クラプトンとジョージ以外のソロ奏者としては、プリンスが一番だろう。トムさんとジェフ・リン、プリンスがもの凄い存在感を発揮しているが、さらに贅沢なことに、スティーヴ・ウィンウッドとジム・キャパルディ,そして二人のハートブレイカーまで揃っている。特にウィンウッドのオルガンがふるっている。この曲はギターだけではなく、オルガンも非常に重要なサウンド・ファクターなだけに、最高の布陣だ。
 ダニーもこういう豪華な場には慣れているだろうが、プリンスのファンだけに、とりわけ楽しそう。プリンスのソロが始まろうとするときに、彼の顔を見て顔一杯に笑うダニー。そしてプリンスが観客席へ倒れ込むのを圧倒されたような顔で見て、おそらくジェフ・リンに向かって「あれ、見てよ!」という表情をしている。

 プリンスのギター・ソロもさることながら、私はこの演奏に関して、トム・ペティのヴォーカルも抜群だと思っている。これまた、ジョージっぽい憂いを帯びた、でも自信に溢れたヴォーカル。プリンスがソロを弾いている間にも、"Look at you all..." と歌っているのが最高にエレガントで、格好良い。

 例の同僚は、実は去年10月3日の早朝、私の次にオフィスに入ってきた人だった。思わず呼び止め、トム・ペティの悲しいニュース(この時点では情報が混乱していた)を話さずにはいられなかった。
 そして先日、その死因の公式発表があり、それがプリンスと同じであったことを話すと、「そう!俺も見ました!」との返事。
 「記事で読んだんですけど、トム・ペティが、プリンスが亡くなる数日前に電話しようと思ったって言うんですよね…」

 この話は初耳だったので、確認してみると、たしかにあった。トムさんがプリンスの死を受けて、Times紙に語っているのだ。

 When Prince Met Tom Petty for ‘While My Guitar Gently Weeps'

 "I almost told myself I was going to call him and just see how he was," he mused. "I’m starting to think you should just act on those things all the time."
 「ぼくは、彼(プリンス)に、元気か、って電話しようかなと思っていたんだ。」彼(ペティ)は思いにふけった。「それからは、やろうと思ったことは、すぐにやろうって考えるようになったよ。」



 賢者の言葉だ。