Trouble No More2017/11/11 22:16

 ボブ・ディランのブートレッグ・シリーズ Vol. 12 [Trouble No More] が届いた。私が購入したのは、2枚組アルバムの方。ボックスで買っても、結局聴かないというのが、[Another Self Portrait] と [The complete Basement Tapes] の教訓である。

 これはかなりロックで格好良い。大好きなディランの一面だ。
 これまでのブートレッグ・シリーズのジャケットがいずれも「静」のイメージだったのに比べて、この弾けぶりからして、いかに力強くロックンロールをぶちかましているか、分かるというものだ。



 1978年にクリスチャンになってから、いわゆる「ゴスペル時代」と呼ばれる時期に入ったディラン。[Slow Train Coming], [Saved], [Shot of Love] というキリスト教色の強いアルバムを発表し、ライブもその流れの選曲となった。
 今回のライブ・アルバムは、この「ゴスペル時代」, 1979年から1981年のライブを収めたものだ。

 当時、このキリスト教への強い傾倒は、不評も買うことになった。
 ところが、私はこの時代のディランも、大好きなのだ。それは、私がそもそも宗教とは縁遠い人間であり、キリスト教には知的な興味こそあるものの、心の問題としてはまったく捕らえていないからだろう。
 クラシック音楽では、宗教音楽はかなりの部分を占める。私にとって、信仰の核心は客観的な事象でしかなく、素晴らしい音楽の原動力として理解している。
 当時のディランがこういうコメントを見たら怒るだろうが、これが現実である。格好良い、力強いロックンロールでありさえすれば良い。
 最近の「シナトラ時代」の方がよほど私には ― 拒否感はないが ― 楽しくはない。ディランはこういう、自分の中での「流行」をまとまった形にすることで、そのキャリアを積み上げ、ディランという人を形勢してきたようだ。それがどう受け取られるか、好評か、不評かは気にしない。それこそがディランの良さだ。

 自分が書いた曲を、自分の口調で、確信を持ってロック・バンドで表現するディランの格好良いこと。ジム・ケルトナーのドラムがどんどんロックを加速させてゆく。エレキが鳴り響き、ディランのハーモニカが吹きすさぶ。こんな至福のロックが、評価されないだなんて、もったいない話だ。
 ミュージシャンもアラバマのマッスル・ショールズから来た、サザン・ロックの猛者ぞろい。サウンド的にもとても好みだ。
 ただし、多少惜しいところもある。
 全体に、女声コーラスがうるさい。私にとって基本的にロックンロールは、異性である男性の魅力の音楽なので、女性はあまり登場しなくて良い。「ゴスペル時代」サウンドの特徴でもあるのだが、やり過ぎ感が否めない。
 面白いことに、Disc2 の方が、女声コーラスが整理されていて、聞きやすかった。演奏年の違いの問題かと思ったら、そうでもないらしい。ライブごとにコロコロと手法を変えるディランらしい現象なのだろうか。

 Vol.12 まで来たブートレッグ・シリーズ。次こそは、TP&HBとの共演時代が出るだろうか。とても期待している。

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