All Things Must Pass2017/02/26 19:40

 CRTジョージ祭りで、本秀康さんがお勧めしていたドキュメンタリー映画が、「オール・シングス・マスト・パス」。タワーレコーズの誕生と隆盛、そしてその終焉までを追っている。



 監督はコリン・ハンクス。名前でピンと来るが、トム・ハンクスの息子だそうだ。
 インタビューに登場するのは、タワーの創始者であるラス・ソロモンをはじめとする、草創期のスタッフたち。彼らが、タワーレコーズがいかに発展していったのかを楽しげに語る。そして、ブルース・スプリングスティーンや、エルトン・ジョン、デイヴ・グロールなどが、巨大レコード店で膨大な在庫に目を輝かせた想い出を懐かしむ。デイヴ・グロールという人は、この手のドキュメンタリーには必ず登場する。
 タワーの隆盛は、まさに60年代から始まったポップミュージックの爆発的な発展と、歩みを共にしていた。そしてその雰囲気も、自由ではちゃめちゃ。服装も髪型も自由だし、アルコールやドラッグ、パーティの日々も謳歌していた。それでも誰もが音楽を愛し、その知識も豊富で、若者たちと情報を交換していた。
 あぶなっかしいが、とりあえずは絶好調で、アメリカ西海岸を足がかりに、まずは日本、さらにアメリカ東海岸、ヨーロッパ、南米へと店舗を広げる。
 80年代のCDの登場は、さらなる業界の発展を予感させたが、それは終わりの始まりだった。音楽のデジタル化は、ディスクというものを介さない、インターネット上の音楽の拡散となり、それがタワーレコーズの店舗を維持することを不可能にしたのは、周知のとおり。もっとも、それだけが原因ではないかも知れないが。

 勢いのある頃を語る人々が、やがて会社の解体となると、人を非難しがじめるのが、辛い。何事にも、そういう時期はある。このドキュメンタリーは、まだタワーの終焉の傷が癒えないうちに作られたことが分かる。
 アメリカのタワーが消滅し、悲しみだけが残る中、日本ではタワーの看板が輝いている。その不思議さにも思うところがある。もっとも、日本のタワーがこれからどうなるかは、私にも分からない。

 音楽は、ディスクという「盤」を完全に必要としなくなるのだろうか。音楽を愛する人は、「物」を集めたがるはずだという考えは、個人的には賛成だ。確かに、かつてほど多くの人がディスクを必要とはしていないし、その商業が衰えるのは仕方が無いことだろう。
 しかし、かつてエジソンがレコードを発明したとき、演奏を生業とする人が職を失うことを心配しつつも、100年以上経過した今でも、「演奏家」は存在する。映画が登場しても舞台芸術は滅びていないし、テレビが普及しても、映画は滅びていない。
 確かに、インターネット普及前ほどの爆発的な利益は得ないかも知れない。音楽にお金を払わずに楽しむ人も多いかも知れない。しかし、音楽にお金をかけたい人も、必ずいると私は信じている。
 音楽が好きな人なら ― ディスクを買う人も、買わない人も ― 一度見てみて欲しい作品だ。

 さて、タイトルでも分かるとおり、このドキュメンタリー作品は、ジョージ・ハリスンファンには必見の作品でもある。アルバム [All Things Must Pass]や[Cloud Nine] が良いところで登場するし、楽曲 [All Things Must Pass]の使われ方など、最高で、かなり涙腺に来る。
 エンディングクレジットの Special Thanks の冒頭に、オリヴィア・ハリスンの名前がある。映画のタイトルを拝借する許可をもらったのだろう。

 All Things Must Pass
 万物は変わりゆく。すべては移りゆく。それでも、音楽と、音楽を愛する人々は存在し続けるに違いない。

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