Nobel Prize: Bob Dylan2016/12/13 21:37

 トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズの全米ツアーと、ロンドン,ハイドパークでのライブが告知された。
 7月までは、どうしても都合が悪く、行けそうにない。泣く泣く諦めている。西海岸の日程がまだ発表になっていないが、アメリカ西海岸には、行く気がしない。とても残念。自分で、何か埋め合わせをしなければと思っている。

 悲しい気持ちを癒やす、ディラン様の話題。何せ、ノーベル賞受賞である。
 NHK が「NHKスペシャル」で10日に放映した、「ボブ・ディラン ノーベル賞詩人 魔法の言葉」の感想から。

 この番組を見た多くのディランファンは、「予想より悪くなかった」と思っているのではないだろうか。要するに、"Blowin' in the wind" だけではなかったということ。代表曲だけでではなく、色々な曲が登場し、濃密な自筆原稿がビジュアル的に迫ってくる様子は、なかなか良かった。

 番組制作上での印象なのだろうが、ディランのミステリアスな面が強調されているのは、ちょっと気になった。
 ヒョウ柄ソファのアル・クーパーも、どうすれば会えるか、皆目見当が付かないという。(もっとも、彼とディランの関係がどの程度の深さのか、良く分からないのだが。)
 確かに、そう簡単には会えないし、テレビにも出演しない、インタビューにもめったに応じない。ある意味「謎多き有名人」なのだろう。

 しかし、ディランは沈黙の人ではないし、隠遁もしていない。賞の授賞式で喋りまくり、ラジオ番組のDJもするし、本も書く。何と言っても、アルバムも出すし、ライブ・ツアーに至っては延々と続けている。彼のコンサートにさえ行けば、ステージ上でニヤニヤしながら、変な動きをしつつ歌いまくるディランを体感できる。ミュージシャンとしては、「アウォードのプレゼンターは務めるけど演奏しない人」よりは、よほど肉体的だ。
 私などは、ジョージやハートブレイカーズを通してディラン様を見ることも多いだけに、それほど神秘的だとは思っていないというのも、「ミステリアス」の強調にはピンとこない理由だろう。

 ノーベル文学賞の理由である、詩について。
 俳優をわざとらしく出してこなくても良いとは思うが、普段はディラン自身の声の英語で聞いている詩を、日本語で語られると、またひと味違う。
 ちょっといただけないと思ったのは、戦争とそのエグい映像が多かったこと。反戦を歌っているのは真実だが、それほど残酷な画像が必要かというと疑問だ。もう一度見たい番組のはずが、この点で二の足を踏んでしまう。
 ディランの詩の世界は反戦や、社会問題を歌っているのはもちろんだが、それだけでは無い。ごく身近で、気楽な、ただ美しい、愛の歌、家族の歌、生活の歌、そういう詩もたくさんある。彼の多面性を、強烈で悲惨な画像の焼き印で制限してしまうのはどうだろう。

 そんな事を言いつつ、実は私、文学というものが全く分からない。本は好きだが、文学というものに興味がないし、詩にはなおさら興味が無い。私は無類の音楽好きであり、ディランの作品は、音楽があるから好きなのだ。ミュージシャン,ボブ・ディランのファンであり、そしてあの容姿の格好良さが大好きなのだ。
 そう!私はディラン様の顔が好きだ!姿が好きだ!キャー!ディランさまー!!約50分間、テレビの前でキャーキャー騒ぎまくり、曲が流れれば、一緒に歌いまくる。
 NHKは [No Direction Home] の制作に関わっているので、あの時期の神々しいディラン様をたっぷり見せてくれたのも嬉しい。
 ノーベル「文学賞」なんて言われても、私には皆目分からない。でもディラン様が格好良い事は分かる。それを再確認した番組だった。

 残念だったのは、ジョージの眉毛もトムさんの金髪も、ちらりとも映らなかったこと。50分でウィルベリー兄弟までも盛り込むのは難しいのは分かるが、かなり期待していたので、がっかりだ。
 でも、たっぷりディラン様を拝めたので良いことにする。

 いよいよノーベル賞授賞式となり、ディランのスピーチが代読された。その全訳がこちら。

ボブ・ディラン、ノーベル賞晩餐会で代読されたスピーチ全文

 分かり易くて良いスピーチだと思う。解説もいらないし、ただ読めば良い。
 面白いと思ったのは、シェイクスピアの話。シェイクスピアは戯曲を書いている最中に、「文学」を意識してはいなかっただろうという話。

 “資金は大丈夫なのか?”“パトロンに十分いい席を用意できるのか?”“骸骨はどこで手に入れたらいい?”など、考えなくてはならない、対処しなくてはならない、より俗世的な事柄もあったでしょう。

 これはニヤリとさせられる。特に小道具の心配がいい。

 せっかくなので、シェイクスピアが登場する、"Stuck inside of mobile with the memphis blues again"。オリジナル・アルバム収録は最高だが、こちらのデモ版も素晴らしい。