The Beatles: Eight Days A Week -The Touring Years2016/09/25 19:56

 ザ・ビートルズの映画 [The Beatles: Eight Days A Week -The Touring Years] を見に行った。休日とあって、満席。ほかの回もSold Outだった。



 ビートルズがデビューしてから中期にいたるまでの、ライブツアーを追った作品で、彼らの生き生きとした活動が堪能できて、楽しかった。
 まず印象的なのは、ビートルズというバンドが、ライブ演奏の名手だったといことだ。[Live at the Hollywood Bowl] でも同じ事を思った。だてにハンブルグで鍛えられていない。自作の曲を、自分たちが作りあげたアレンジで(プロデューサーの導きがあったにしろ)、自分たちの演奏で録音で世に送り出し、認められただけに、ビートルズには自信がある。そういう弾けるばかりの自信と、無邪気さが、彼らの強みだった。

 ところで、映画を一緒に見に行った一人が言うには、LPで出ていたオリジナルの [The Beatles at the Hollywood Bowl] は、かなり残念な作品で、「ビートルズはライブが下手なのだ」という感想を持ったそうだ。その印象のせいで今回のリマスターは未だ聴いていないとのこと。
 これには驚いてしまった。私はオリジナルを聴いておらず、今回のリマスターでビートルズの上手さに感心していたのだから。当時の機材と、歓声の凄まじさが、それだけ彼らの録音を損ねていたということになる。技術の進歩のありがたさは、計り知れない。

 映画は1965年シェイ・スタジアムでのライブで、一つのクライマックスを迎える。実のところ、この映画はここで終わっても良かったのかも知れない。最後にシェイでの演奏をたっぷり見せて、ライブ・バンドとしてのビートルズの最高潮で終われば、めでたしめでたし。
 その後の、ビートルズを取り巻く環境の狂乱ぶりから、ライブツアーを嫌悪するに至るところは、残念な気持ちで終わってしまうので、やや後味が良くない。
 私がシェイでの大団円を提案したところ、同行の人が「日本公演をカットしてしまうのは、大市場である日本のことを考えると難しい」と述べた。なるほど。私にとっては、ビートルズの日本公演があろうが、なかろうがどうでも良いのだが。

 一番印象的だったのは、ビートルズと言うバンドが、とにかく仲の良いバンドだったということ。彼らの間にあったのは間違いなく強い愛情であり、それがあったからこそ、あの若さで自分を見失うことなく、過酷なライブツアーの日々に耐えられたのだろう。
 バンドとしての仲の良さ、友情が彼らの根本にあり、ライブツアーを止めた後も、数年は結束してバンド活動を続け得たのは、それ故だったろう。メンバー個々の才能のために、遅かれ早かれ自ら爆発してしまう運命にあっただろうが、四人の友情と絆は疑う余地がない。
 バンドとしての結束,楽しさ,互いの信頼感と愛情は、ジョージのその後の活動にも強い影響を与えていたと思う。ジョージはその才能を、ビートルズで十分に発揮する機会に恵まれなかったため、もっとも解散の恩恵を受けた人だが、同時にバンドという物に対する情熱も持っていたに違いない。
 14,15歳から27歳まで ― 人間形成に大きな影響を与えるこの時期に、最高のバンドのメンバーの一人であり、仲間を愛していたジョージは、どこかで常にバンドを欲しており、その情熱が、トラヴェリング・ウィルベリーズとして結実したと考えて良いのではないだろうか。

 映画は本編の後、デジタル・リマスターされたシェイ・スタジアムでの演奏をたっぷり見せて終わる。この部分は、映画館上映限定とのことだが、どうだろう。DVD, Blu-ray にならないとはちょっと考えがたい。
 シェイ・スタジアムの演奏はその熱気と、演奏の充実で最高のひとことだ。[Hollywood Bowl]と同じく、貧弱な機材,モニター無しの状態で、よくもこれほどの演奏ができたものだ。曲によっては、始まるなりジョン,ポール,ジョージが一斉に振り返ってリンゴを見つめる。本当に何も聞こえなくて、見るしかなかったのだろう。

 一つ、初めて見る映像として印象深かったのは、リヴァプールFCの本拠地アンフィールドでの、大合唱だ。



 リヴァプールのサポーターのことを、本拠地のスタンドの名称(The Kop)から、The Kopites と言うそうだ。
 私はこの合唱を今回の映画で初めて見た。1964年から65年のシーズン、リヴァプールは優勝したとのこと。フットボールには疎いので、どういうリーグのどういうタイトルなのかは知らないが。
 この素晴らしい合唱は、リヴァプールの誇り,フットボールとビートルズが融合した、堂々たる物で、とても感動した。どうして、今まで見たことがなかったのか、不思議だ。

 映画の大画面で、綺麗なビートルズの音と映像。素晴らしい楽曲に演奏、魅力的な若さ弾けるビートルズ、とりわけ目を引く美男子のジョージ、ジョージ!
 ビートルズファンはもちろん、ビートルズをこれから聴く人も、ロックが好きだというだけの人も、この映画はおおいにお勧めだ。