Pictures at an Exhibition2016/03/16 22:35

 キース・エマーソンが亡くなったというニュースは、そのいたましい状況もとともに、伝わった。悲しいことだ。

 私はプログレッシブ・ロックには全く興味が無く、完全に門外漢だが、さすがに エマーソン・レイク&パーマーの[Pictures at an Exhibition](「展覧会の絵」)だけは持っている。
 言わずと知れた、クラシックの名曲のロック・バージョンだが、これはこれで、けっこう好きだ。威勢が良くて、エネルギッシュで、しかも美しく、オリジナリティもある。名演だと思う。



 「展覧会の絵」の原曲は、ロシアの作曲家モデスト・ムソルグスキー(1839-1881)によるピアノ組曲だ。一般にはモーリス・ラヴェルによるオーケストラ編曲版が有名で、ELPもこのオーケストラ版をベースにしているのだろう。

 ピアノ組曲に関しては、とにかく難曲。ピアノ学習者はどんなタイミングでこの曲に取り組むのだろうか。私は一生弾かないし、弾けないと思う。
 私が小学生か、中学生だったとき、あるピアノの発表会に出たのだが、そのトリが、現役のピアノ科音楽大学生だった。この音大生が、なんと「展覧会の絵」を全曲暗譜で弾いたのだ。30分はかかる。私のようなヘタな子供が残念な演奏をする発表会の最後に、どうしてそんな展開になったのか、今でも謎だ。
 とにかく、私は呆然としてしまった。感動して憧れの曲になったというのではない。ひたすら「凄まじい」という感想だったのだ。曲調のせいかも知れないが、底知れぬ恐ろしさを秘めた曲であり、ある意味、悪魔の領域に思えた。有名な冒頭「プロムナード」の晴れ晴れとした明るさも、大きく深い謎への導入でしかなく、その印象は今でも変わらない。

 ピアノ名曲名盤ガイドでは、1958年リヒテルのライブ録音を勧めている。まさに「幻の剛腕」リヒテル。



 ELPの演奏はとても良いのだが、一箇所だけ、どうしても意見の合わない箇所がある。
 冒頭「プロムナード」,第二テーマのフレージング。リヒテルのピアノや、ラヴェルのオーケストラバージョンは、上の青いスラーのように大きく弾くが、エマーソンは下の赤いスラーのように、短く切って弾く。



 オルガンという楽器の特性のせいなのか、それとも彼の解釈がこうなのか。ほかは、どう「ピー!」だの「ガー!」だの鳴っても気にならないが、どうしてもこれだけが引っかかる。
 エマーソンの死を知って、あらためて聴いてみた [Pictures at an Exhibition] で、そんなことをぼんやりと考えている。