The Birds2014/09/01 22:54

 ディラン様ラジオこと、[Theme Time Radio Hour] のテーマは、"Birds"。いきなりヒッチコックの「鳥」から始まってびっくりしたが、とにかく音楽においては登場頻度の非常に高い動物のである。

 "bird" と言えば、ずっと以前から、ザ・バースを聴こう、聴こうと思って、聴き損ねていた。
 このザ・バーズは、カリフォルニア州のあのザ・バーズ The Byrds ではなく、1964年イングランドはイーズリー出身の少年達によって結成されたザ・バーズ。The Birdsのこと。なんといっても、ロニー・ウッドが在籍していたことで有名だろう。

 ウィキペディアの記事による、1964年に結成され、最初はザ・サンダーバーズといったらしい。
 地元のクラブで演奏しつつ、バンド・コンテストで勝ち上がってテレビ番組 [Ready Stead Go!] に出演。それがデッカ・レコードの目にとまり、何枚かのシングルを発売した。ザ・フーの前座などもこのころ、つとめている。
 "Leaving Here" は、モータウンのソングライターチーム,ホランド・ドジャー・ホランドの作品で、これをロックに演奏している。



 これはなかなか格好良い!あの変なテレキャスみたいなギターの白セーターがロニーか!わぁお。もちろん、まだティーン・エイジャー。
 途中で出てくるクラブのポスターが面白い。ザ・バーズとともに、ゼムや、スペンサー・デイヴィス、さらにジョン・リー・フッカーの名前まである。これは凄い。

 さらに記事を読み進むと、面白いことが書いてあった。1965年春にカリフォルニアのザ・バーズ The Byrds がイングランドにやってきたとき、The Birds のマネージャーは、カリフォルニアの彼らに、「ザ・バーズ」の名前を使わせないよう活動したのだが、これが大失敗に終わり、そのあとすぐにこのマネージャーのもとをバンドは離れてしまったとのこと。
 この時期のThe Byrds はデビュー作として "Mr. Tambourine Man" 引っさげており、The Birds とは輝きもパワーも全然違ったことだろう。

 その後、バンドはレコード会社を移ったり、名前をザ・バーズ・バーズ The Birds Birds に変えたりもしたが、結局アルバムを発表することなく、1967年には解散している。

 なんだか寂しい結末の記事になってしまった。
 たしか、ロニーがカリフォルニアの The Byrds について言及していたインタビューがあったと思うのだが、思い違いだろうか。「おなじ『バーズ』だったから、親近感があった」と、どこかでコメントしていたと思うのだが、どこで読んだ話だったかは、完全に失念している。

The Apple Years 1968-752014/09/04 22:34

 少し前から話題になっていたが、いよいよジョージのアップル時代のボックスセット,[The Apple Years 1968-75] 発売が公式発表された。

Announcing The Apple Years 1968-75 Box set – Released 22nd September



 プロモーション動画がこれまたとびきり格好良い。



 9月22日発売。日本版はもうすこし遅くなるのだろうが、ここがファンとしては悩みどころ。
 いち早く輸入版を手に入れたい一方、日本での売り上げにも貢献したい。DVDもつくから、日本語字幕も欲しいし、いや、輸入版にも日本語字幕はあるかも知れないとか、ブックレットの日本語訳が欲しいとか、いや要らないとか…頭が痛い。
 さすがにボックスとなる二つ買いは…きつい…はずだが…

 ともあれ、[不思議の壁」と[電子音楽]も入っているところが面白い。実は私はこの二作を持っておらず、さていつ買ったものかと、いつまでも保留していたのだ。これは良い機会になった。

 期待されていた74年の北米ダーク・ホース・ツアーの音や映像が収録されていないことについて、残念がる声も聞こえる。
 これに関して、私の意見は微妙。たしかにジョージ・ファンとしては見たい、聴きたいお宝ライブ音源だろう。しかし、故人の遺志に反してまで ― たぶん、ジョージは公開する気がなかったと思う ― 聴きたいかというと、そうでもない。
 満足のいかなかった、いやそれどころか自分では失敗と思っている演奏を、広く人に聴かせることがどれほど嫌なことか、私も少し演奏する人間なので、良く分かる。人がどう思おうと、自分で最悪な、思い出したくない、人に聞かせたくないと思った演奏は、絶対に出したくないのだ。恥であり、プライドの問題となると、たしかに封印したくもなるだろう。
 ジョージはプロのミュージシャンなのだからそうも行かないのかもしれないが、私はしまい込んでおきたい人の気持ちも尊重したい。デモテープとか、練習、リハーサルなどを積極的に、しかも大量に商品化するのも、あまり好きではない。ミュージシャン自身が出来に満足していない、飽くまでも練習として捉えていたのなら、私たちは聞かないふり、知らないふりをするのも大事だと思う。
 予想外にこのことについて熱く語ってしまったが…まぁ、世の中には故人の鼻歌やおしゃべりまでお金にする人もいるし、それが嬉しいファンがいるのも事実。難しいところだ。

 私はダーク・ホース・ツアーがなくても十分満足。待ちに待ったアップル・イヤーズ・ボックスを、楽しみにしている。

Journey to New York City2014/09/06 19:52

 明日、いよいよニューヨークに向けて発つ。
 最近はロンドンにばかり行っていたので、ニューヨークは4年ぶり。4回目だ。
 旅の目的はもちろん、トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズのライブ。9月10日マディソン・スクウェア・ガーデンにて。スペシャル・ゲストはスティーヴ・ウィンウッド。



 大評判の新譜 [Hypnotic Eye] を引っさげて、大規模会場での北米ツアー。否が応でも気合いが入るというものだ。お馴染みのヒット曲に、彼らお気に入りのカバー曲、自信ありの新曲、幸せなロックン・ロール・ライブ・ショーを存分に楽しみたい。
 他にも、ミュージカルの[Motown: the Musical] に、リンカーンセンターでのバレエ観賞と、エンターテインメント的にも充実の旅になる。
 美術館や、町歩き、お買い物、食事など、楽しみはたくさんある。

 滞在期間中には、9月11日もある。あの事件から13年たつが、どんな様子なのだろうか。さすがに当日の周辺は物々しい雰囲気なのだろうか。

 いつものように、旅行先ではネットに接続する術を持っていない。帰国までこのブログもお休み。帰ってきたら早速、報告したいと思う。

Back from New York2014/09/13 21:26

 本日、無事にニューヨークから帰ってきた。
 4年ぶりのニューヨーク。変わったところもあるし、変わらないところもある。

 詳しくは改めてレポートするが、トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズのライブについて、様子を少しだけ。
 席は前から6列目だったので良いのだが、やはり巨大アメリカ人たちが総立ちになるとたいへん。視界を確保するのに一苦労。最近慣れていた大人しいUK人に比べると相手としては格段に手強い。
 そんなわけで、今回の動画はとても良くないものばかり曲をフルで収めることは一つもできなかった。

 この、最後のご挨拶は比較的よく撮れている方。ちなみに、曲はもちろん "American Girl"。斬新すぎるエンディングに驚いてしまった。まさかスイッチオフでお終いとは…。
 マイク格好良い。誰もが思う。マイク格好良い。



 うーん。小柄な私の苦労が良く分かる…

 最後のご挨拶と言えば、スティーヴ・ウィンウッドも。曲は、"Gimme some lovin'"。最後にぐるりと周りを撮しているのは、20000人の観衆を入れておきたかったから。
 これまた、私が人の壁と大格闘していることが良く分かる。
 詳細は、改めて。

I'm Tired Joey Boy2014/09/16 22:00

 私はヨーロッパよりも、アメリカから戻ってきた時の方が時差ボケがひどい。帰国してからの二日間はほとんど役立たずな様子でグゥグゥ寝ていたし、今日も何かと眠い。
 そのような訳でツアーの写真や動画の整理、レポートなどはお預け。こういう事は早い方が良いのだが。

 ピーター・バラカンさんの、「バラカン・モーニング」が終了するという。このことも残念だが、ディラン様ラジオこと、[Theme Time Radio Hour] のことも気になる。すでにシーズン2の終盤まで来ているので、最後までちゃんとやってほしい。もちろん、バラカンさんの解説と選曲つきで。

 一昨日のテーマは "Joe"。ディランはいくらでもテーマはあるよと言っているが、要するに Joe, Joseph, Joey という名前の人が多く、またその曲も多いと言うことだろう。
 一番印象的だったのは、トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズ・ファンの私としてはもちろん、ヴァン・モリソンの "I'm Tired Joey Boy"。

 

 私はてっきり、この曲は古い民謡か何かだと思っていた。ヴァン・モリソン1989年という新しい曲だとは意外だった。
 短くて美しく、重厚なストリングスがとても効果的。

 しかし、先に馴染んでいるTP&HBのヴァージョンの方が好き。

 

 1992年のライブバージョン。彼らがカバー曲として3年前の「新曲」を演奏するのは珍しいのではないだろうか。よほど気に入ったに違いない。私が古い民謡だと思ったのと同様の感覚が働いたのではないだろうか。
 なんといっても、イントロで鳴り響くピアノの音色が素晴らしい。簡素ながらキラキラとまぶしく、滑らかさ、爽やかさがよく出ている。
 そして、トムさんの素朴で胸をしめつけられるような歌声。
 とどめに、マンドリンのような高音域の撥弦楽器。マイクが弾いていると思うのだが、マンドリンなのか、ライブの "Learning to Fly" の時によく使う緑色の小さなリッケンバッカー型のようなアレなのか。
 聞くところによると、マイクのあの緑のかわいい楽器は、トニー・レヴェルさんというウェールズの職人さんが作っているとのこと。ちょっと欲しくなるが、きっと弦圧が高くて私には無理だろう。

 この曲は、ボックスセット [Playback] に収録されている。
 私に「悪文」呼ばわりされている有名な解説によると(内容は悪くないが、とにかく文章が悪い。よくぞ翻訳したものだとそちらに感心している)、この曲でスコット・サーストンはハートブレイカーズとして(サイドブレイカーズとして?)の録音媒体デビューを果たしたそうだ。
 と、なるとあの高音域の撥弦楽器はスコットということも考えられるのだろうか?
 私にはどちらとも判別できないが、とにかく、いつかまたライブで演奏して欲しいと願う曲の一つだ。

TP&HB in MSG, NY 10th Sep. 20142014/09/19 21:42

 2014年9月10日。ニューヨーク,マディソン・スクウェア・ガーデン。トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズのライブはSold Out。



 前座のスティーヴ・ウィンウッドに続き、9時にいよいよTP&HBが登場した。セットリストは、以下の通り。

So You Want To Be A Rock ‘n Roll Star
Mary Jane's Last Dance
American Dream Plan B
Into The Great Wide Open
Forgotten Man
I Won't Back Down
Free Fallin'
A Woman In Love (It’s Not Me)
U Get Me High
Rebels
Two Gunslingers
Yer So Bad
Learning to Fly
Shadow People
I Should Have Known It
Refugee
Runnin' Down A Dream
You Wreck Me
(I'm Not Your) Steppin' Stone
American Girl

 コンサートをめぐる諸々のことはいずれ [Cool Dry Place] にツアーレポートとしてあげるとして、ここでは曲とハートブレイカーズの様子について。

 まず冒頭に念願かなっての1曲。私が最初にハートブレイカーズに惚れ込んだのがこの曲のビデオだったので、本当に嬉しい。
 80年代よりも、さらに去年のライブよりもさらにテンポを抑え気味に、重々しく、でも格好良かった。

 3曲目にして早くも新譜 [Hypnotic Eye] の曲が登場。合計4曲が新曲だったのだが、これがまた格好良かった。全て長いコーダ無しで短く、潔い演奏。
 以前のライブだとどうしても新曲は人気がなくトイレに立つ人も多かったのだが、今回はそういうこともなくみんな熱心に聞いているように見えた。さすが、全米1位の実力。



  私が個人的に嬉しかったのは "I Should Have Known It"。[Mojo] の収録曲でかなり好きなのだ。バスドラムとベースの音が迫力満点。リッケンバッカーの軽快なロックとはまた違うハートブレイカーズの魅力が満喫できる。
 トムさんのマラカス&タンバリン・パフォーマンスも健在。いよいよマラカスは後方へ放り投げるためだけのアイテムになりつつある。

 カバー曲としては、冒頭の1曲と、やはり "(I'm Not Your) Steppin' Stone"の格好良さは筆舌に尽くしがたい。歌い出す前に「ロックンロールは決して負けない、ロックンロールは決してくじけない、ロックンロールは断じてあんたの踏み石にはならない!」とトムさんがシャウトして始まる。
 ベンモントやスコットのコーラスも力強く、去年から引き続き新たなコーラスワークの充実が見られる。



 バンドワークはスムーズ、かつ意思疎通が完全にはかれている、完璧な仕事だったと思う。音に対して、演奏技術に対して、演奏の出来に関して、「アレッ?」と思う瞬間はほぼ無かった。(実は、私は時々ベンモントのミスタッチを気にすることがある

 トムさんのカワイイと評判(?)のブーツは位置の関係で見えなかったのは残念。
 トムさんのあごひげはもう少し短く揃えた方が良いけど、あいかわらずのステージに立つとキラキラと輝く女優ぶり。
 スコットが帽子とスーツでびしっと決め、両足を開いてギターを弾く姿もスターっぽくて格好良かった。
 そしてやはり、女子の口から出るのは、「マイク格好良いね…」の言葉。あの格好良さは一体何なのだ。静かな佇まいで、控えめで、派手なことはしないのに、とてつもなく格好良い。確かな演奏と、音楽に対する自信が、彼の姿の魅力を際立たせているのだろうか。
 最初、サングラスをかけて登場したマイク、数曲で外したのだが、何故か "Learning to Fly" でもう一度かけ、そして外す。彼なりのこだわりがあるらしい。

 最後の "American Girl" はもちろんウルウルしながら見ていた。
 今回のエンディングは、全ての楽器のノイズをワーン!と響かせたまましばし放置し、最後の最後にトムさんがスイッチを切ることでお終いという、斬新な演出だった。うん、まぁ面白いけど。続けなくても良いかな。



 演奏が終わって直ぐにサングラスをかけたマイクが、何かトムさんの耳元で言いながら二人で笑っている。あれは一体何を話しているのだろうか。ご丁寧に2回も話していた。仲良しさん、お疲れ様。

 ほかにもアレやコレや、苦労や消化不良の話もあるが、それはまた改めてレポートにて。

Friends of Mine2014/09/22 20:35

 ニューヨークへ行く前から行っている最中の数週間、iPodでは [Hypnotic Eye] と、TP&HBの2013年ライブ、それからスティーヴ・ウィンウッドのセットリスト曲を繰り返し聞いていた。
 ライブも終わり帰国して、さて何を聞こうかと考えたとき、特にどういう気分もなかったので、iPodに入っているアーチストのアルファベットを逆から聞いていくことにした。
 最初に The Zutons。その次に、The Zombies 。ゾンビーズはベスト版しか持っていない。もっともゾンビーズはメジャーデビュー後の活動期間が短いため、まともなアルバムは2枚しか出していないので、ベスト版でもかなりの網羅性があるのだが。

 ゾンビーズ。改めて聞いてみると良い。あの60年代に青春の情熱を傾けてバンド活動にいそしんだUKのキラキラと輝く少年たち。ロッド・アージェントと、クリス・ホワイトのソングライティングもなかなか良い物が揃っている。
 ライナーノーツによると「ジョン・レノンが彼らをプロデュースしたいと思った」そうだが、その出典は良く分からない。確かに、ジョンがそう言い出しても不思議はないだろう。バッドフィンガーほど「弟分」的ではないが、ストーンズなどのような「同士」と比べると、ちょっと「後輩」的。上手いけど、かわいらしさ、あどけなさの残る感じが眩しい。

 以前、車のCMで使われて話題になった "Time of the Season" も良いが、いちばん私の心を掴んだのは、"Friends of Mine"。ゾンビーズ最後のアルバムにも収録された、1967年のシングル曲。



 たくさんの友達の名を挙げ、彼らの恋を思う。要するに友情賛歌。爽やかで微笑ましく、フォークロック的な雰囲気に良く合っている。
 ゾンビーズ・サウンドの特徴である鍵盤 ― この場合はピアノのゴツゴツした感じも格好良く、さらにリッケンバッカーなどの華やかで軽やかな音運びも心地よい。何と言ってもヴォーカルとコーラスの美しさが魅力的だ。
 楽器のソロ部分で、「ハッ!」とアイリッシュ・ミュージックのようにかけ声をかけるところも大好き。ドラムのバタバタした ― やや拙い ― 感じも味わい深い。
 惜しいのはエンディング。あそこは延々繰り返してフェイドアウトした方が良いと思うのだが、ちょっと凝ってしまったか。

 YouTube でこの曲を探していたら、珍妙なものに出くわした。曲はゾンビーズの "Friends of Mine" なのだが、動画はジョージ・ハリスンとパティ・ボイドのカップルを延々と見せるというもの。



 ゾンビーズとジョージの関係で特筆する事柄を知らないので、どういうわけでこの動画が作られたか良く分からないが、とにかく引き込まれてしまう。
 ジョージとパティ,最強の美男美女カップルを見ていると、なんだか笑顔になってしまう、嬉しくなってしまう、友達が恋をして幸せそうなのを見ている方も幸せだという、この曲の気持ちに絶妙にフィットする。

 良い機会なので、ゾンビーズのアルバム2枚を購入。これから聞いてみることにする。

CONAN:George Harrison Week2014/09/25 20:55

 アメリカの人気テレビ司会者コナン・オブライエンの番組 [CONAN] で今週、[George Harrison Week] という企画が放映されている。もちろん、英米では既に発売になっているジョージの [Apple Years] との連動企画。
 ベック,ポール・サイモン,ダーニ・ハリスン,ノラ・ジョーンズが1日ずつ登場して、ジョージの曲を演奏したり、コメントしたりする。今までの所、ダーニまでが放映された。

 早速、ベックの "Wah-Wah" からチェック!



 選曲センスはとても良いが…うーん、ちょっとサウンドが薄いかな。どうしてもあの原曲の分厚さ、ゴージャスさを思うと、曲にパワーがない。ベックのヴォーカルの気合いがちょっと空回り気味か。バックにもっと楽器を入れたら良かったかも。

 お次は、これぞ定番中の定番、ポール・サイモンによる "Here Comes the Sun"。



 オブライエンも言及していたが、当然[Saturday Night Live] でのジョージとの共演を念頭に置いた演奏。ギター二本、二人だけの演奏とヴォーカルには聴き応えがある。
 しかし、サイモンが歌詞を溜めながら遅らせ気味に歌うのはちょっとダサいと思う。この曲はあのテンポの良さ、リズムの心地よさが重要なので、あまり演歌調にこねくり回すのは好きな演奏ではない。

 いよいよ登場するのは、ダーニ・ハリスン&フレンズ。ダーニ、おでこ広いね。まずは "Let It Roll" から。



 お仲間のヴォーカルや、スライドはとても素敵。ただ、少しテンポが悪い。テンポを意図的に抑え気味に演奏しているのだろうけど、ちょっともたつくように聞こえるかな。でも、全体的には雰囲気も良いし、コーダに独自性があって良い。
 さらにもう一曲、"Let It Down"。



 これは格好良い!分厚いホーン・セクションに、熱いコーラス隊、エレキ3本にバンバン鍵盤。こうでなきゃね。この編成で "Wah-Wah" が聞きたかった。
 特にイントロの威勢の良さが格好良い。ダーニの余裕のない、切羽詰まった感じのヴォーカルも良い。緊張感がこの曲に良くあっている。Aメロではもうすこし肩の力を抜いても良いと思うけど。
 それから、イントロ後のテンポの押さえ方はもう少し軽くて良いのでは?これもちょっとテンポの悪さが感じられる。慎重で丁寧とも言えるが
 コーダの騒々しさがまたイカしている。
 ダーニのお友達は知らない人ばかりだが、良い仲間が居るようで嬉しい。マイク・キャンベル先生もツアーに出ていなかったら、デレデレしながらつきあってくれただろう。

 明日にはノラ・ジョーンズが登場する。何を歌うのか、楽しみだ。

You2014/09/28 15:12

 ジョージの [The Apple Years 1968-75] は、10月の日本版発売を待っている。
 前回の[Dark Horse]ボックスは、確か日本版がCCCDか何かで買う気が起きず、輸入版を購入したため、すぐに手に入った。
 今回は日本での売り上げに貢献するべきだという認識とともに、ニューヨークのこともあってそれほど急いで手に入れたいという焦りがない。ゆっくり待つことにする。

 [Apple Years] の目玉は、リマスター・再版がされずに最後まで残っていたアルバム[Dark Horse]と、[Extra Texture] だと思っている。このボックスの発売を機に、この2作の良さも再認識されることを期待している。
 さらにワーナー移籍後,つまり[Dark Horse]ボックスもまた注目され、ウィルベリーズに波及し、最終的にはTP&HBに注目が集まると更に良いのだが。

 [Extra Texture] の中で一番のお気に入りは、オープニング曲である "You"。
 解説によれば、アメリカのR&B, ソウル、とりわけモータウンの影響が強い曲だという。作曲は1970年頃。[All Things Must Pass] の "What Is Life" や、"Awaiting for you all" に通じる、華やかでキャッチーな曲調だ。
 元々は、1971年にロニー・スペクターのヴォーカルで録音されたが、彼女の名義で発表されることはなく、1975年にジョージのヴォーカルや、ジム・ホーンのサックスをオーバーダビングし、あらためて[Extra Tecture] のオープニングを飾り、シングルカットもされた。



 これは、ロニー・スペクターのバージョンにオーバーダビングしているので、キーもそのままだったと思われる。そういうわけで、明かにジョージの声に対してキーが高すぎる。あと3度か4度くらい下げた方がジョージ向きだったろう。実際、ジョージのヴォーカルが非常に不安定だ。
 それでも大好きだということは、曲の良さ、バンドサウンドの格好良さが際立っていると言うこと。

 もともと女性向きに作られているので、カバーでは、リサ・コールズのバージョンが良いと思う。残念ながら動画サイトにはアップされていないようだが、ジョージの死後発表されたトリビュート・アルバム [He Was Fab]に収録されている。
 ちょっと演奏が軽いが、女性ヴォーカルの力強さを最大限に活かした曲で、これはもっと聴かれても良いだろう。サム・ブラウンなどが力一杯カバーしたらこれまた素敵なことになるだろう。

 男性のカバーでは、カナダのロック・バンド, ブリンカー・ザ・スターのバージョンがある。



 このヴォーカルはもともとキーが高めなのか、この曲では裏声を駆使しているのか、なかなかの力作だ。もうちょっと低音楽器を重くしてどっしりさせたらもっと良い。
 何にせよ、この "You" はこういう演奏しかあり得ないというほどの完成度。ブリッジのあの疾走感がなんとも言えない。

 "You" のように、今となっては「隠れた名曲」となってしまった歌の数々が、装いも新たに届けられる。[The Apple Years 1968-75] が楽しみだ。