American Dream Plan B2014/06/09 20:17

 トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズの新譜[Hypnotic Eye] から、"American Dream Plan B" が公開された。
 曲を聴くまえから、このタイトルが凄い。脳天気で楽観的な「アメリカンドリーム」ではない、それでも夢はある。人がそれを夢と言うかどうかはとにかく、「夢見るような」ではなくとも、とにかく夢はある ―



 ヘヴィなイントロから、重々しいAメロの始まり。ちょっと "Here comes my girl" のようでもあり、最近のストーンズにありそうな感じもする。ここだけ聞くと、まえにトムさんがインタビューで言っていた「デビュー当時のようなロックンロールな感じ」とは合わないような気がするのだが…

 サビで急に開ける!
 ここでガツンとやられた。突然、降り注ぐメジャーコード。金色に輝く、熱いほどキラキラしたサビのサウンドが炸裂するのだ。

I got a dream I’m gonna fight til I get it...
俺には夢がある 夢をつかむまでは戦い続ける...

 2回目のサビから、ギター・ソロに入る前のブリッジのような部分はもう、やられたとしか言いようがない。あんなアコースティックの音の光の粒をまき散らされたら、震え上がるほどゾクゾクせずにはいられない。
 そしていつものように、短いけど、全てを語るようなマイクの(マイクだよね?)ギターソロ!ああ、ここに理想のロックバンドが実在している!
 さらにサビを繰り返すのだが、アコースティックサウンドがさらに引き立ち、ジョージ・ハリスンのような控えめでごく短いくせに、ひどくセクシーで切ないギターが歌っている。
 マイク・キャンベルは間違いなくギターのヴィルトゥオーソだが、何よりも歌が好きなのだという。大好きな歌のために、すべてを捧げる最高のギタリスト。贅沢すぎる音楽。

 最後に思わずニヤリとしてしまうのは、びっくりするほど潔いエンディング。こんなに素っ気なく終わる曲もそうそう思いつかない。これはアルバム全体を考えてのことだろうか。
 ライブで演奏するときは、ぜひともエンディングを適度に伸ばして、格好良いソロをもう少しだけ聞かせて欲しい。

 トムさんのコメントから、期待大なアルバムだとは思っていたが、どうやら期待以上のものが出るのではないかという予感がしてきた。

 アルバム・ジャケットには賛否両論あるようだが、TP&HBはソロワークも含めて、ダサいジャケットがほかにいくらでもあるので、これは良い方ではないだろうか。ちなみに、私にとって最悪のジャケットは [Highway Companion] 。
 今回の [Hypnotic Eye] は、第一印象が「目がチカチカする。」
 そうか。だから "Hypnotic (催眠術にかかった)瞳" なのか。