Ruby Tuesday / Recorder2014/04/22 22:01

 ディラン様ラジオこと、[Theme Time Radio Hour] はシーズン2。先日のテーマは、"Days of the Week"。曜日に関する曲をたくさん紹介した。

 トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズがカバーしている "Lonely Weekends" など興味深い曲がいろいろかかったが、やはり白眉はザ・ローリング・ストーンズの "Ruby Tuesday" ではないだろうか
 ディランはストーンズの曲のなかでも最も素晴らしいものの一つだと評している。この曲は ラジオでの放送を敬遠された "Let's Spend the Night Together" のB面だったため、A面にかわってたびたびオンエアされ、ヒットしたとのこと。そういう事情がなくても、ヒットに値する名曲だ。

 ディランは、とりわけブライアン・ジョーンズが吹いている(ということになっている)リコーダーが好きだと言う。曰く ―

 このリコーダーは、"fipple flues" として知られている木管楽器の仲間だ。"fipple" というのは、フルートの端にさし込まれた木製のプラグのこと。

 私はてっきり、"Ruby Tuesday" の印象的な笛は、フルートだと思い込んでいた。フルートとなると中途半端な素人には難しいので、プロのフルート奏者が弾いているとばかり。
 改めて聞いてみると、たしかに、リコーダーのような気もする。

 ディランのこの説明だと、横笛であるフルートの頭部管にプラグ(栓)をさし込んでいるように感じるが、実際は縦笛。いわゆるリコーダーと呼ばれるものと思って良い。
 リコーダーはルネサンス期から盛んに演奏されるようになったが、バロック期までその役割はフルートと明確に分けられていなかった。リコーダーとフルートの違いは縦か横か―つまり音を出す原理だが、その他の構造、音域、指使い、音色が非常に似ていたのだ。
 実際、今でもプロのフルート奏者が、同時にリコーダー奏者であることがよくある。
 リコーダーは強弱のコントロールが難しく、強く吹くと音程が狂い、音がひっくり返るし、弱く吹くと音程が下がり聞こえなくなる。フルートはその狂いが少ないため、古典派以降(18世紀以降)フルートの改良が進んでオーケストラの中に組み込まれた。
 「フィップル・フルート」という名前は、バロック期までのフルートとリコーダーの役割が明確に分かれていなかった頃の名残。「頭部に栓を仕込み、フルートのような音がする縦笛」を、「フィップル・フルート」と呼んでいたというわけ。
 もちろん、リコーダーは木製が基本で、プラスチックのものは最近できたものだ。

 さて、ローリング・ストーンズ。



 "Ruby Tuesday" を聞く限り、このリコーダーはかなり上手いと思う。音程も正確だし、タンギングの有無を非常によく使い分けている。
 リコーダーは音をだすことが簡単なため日本の学校教育で用いられた分、「簡単で間抜けな音のな楽器」と思われがちだが、実のところかなり難しい。私も音大時代、バロック・リコーダーをやっており、チェンバロ,ヴィオラ・ダ・ガンバとのアンサンブルなどやったものだが、とにかく音程のコントロールに苦労した。

 あまりにも器用に吹いているので、本当にブライアン・ジョーンズが吹いているのか、未だに疑っている。ロック(ブルース)ギタリストの余技にしては上手すぎる。
 ブライアンが参加している演奏動画を探すと、一応エド・サリヴァン・ショーあったのだが…



 ええい、うるさい!聞こえないじゃないかッ!!
 実際にブライアンが吹いているのかどうか、判然としない。木製リコーダーを吹く指使いはだいたい合っいるとは思うのだが…。音と指から判断して、アルト・リコーダー。マイクはどこに設置してあるのだろうか?
 それとも当てぶりなのか。エド・サリヴァン・ショーでそういうことってあったのだろうか。ついでに言うと、ミックの前髪がよろしくない。一体、何を求めてあんなことになったんだ…?

 ブライアン・ジョーンズはビートルスの "You Know My Name" でも短いサックスを吹いているが、これもまたなかなか器用。彼があれほど若く死ななかったら、いろいろと面白い音楽を作ってくれたのではないだろか。