Chestnut Mare / Horse to the Water2014/01/02 22:50

 干支というものは不思議なもので、自分の干支でもない限り、今年が、来年が、何年であるか覚えているのは、年末年始だけだ。
 午年といったら、普通のロック・ファンはニール・ヤングのことを思い出すのだろうが、私は彼のファンではない。
 私が真っ先に思い出すのは、ザ・バーズの "Chestnut Mare"だ。




 私はこの曲を、バーズの曲だという情報なしで初めて聴き、いたく感動した。美しいギターリフの重なりを聞いただけでも涙が出そうになる。ロジャー・マッグインのきらめくような12弦の音と、クラレンス・ホワイトの作りだす豊かな響き。
 ロジャー・マッグインは声量のある方ではなく、決してソロ・ボーカリストとして抜きんでている訳ではないが、この曲にはこの細い声しか考えられない。あの頼りなくて、悲しくなるような美しい声で、切々と歌い上げていく盛り上がりが最高。
 メロディの美しさ、プロデューシングの巧みさ、サウンドの豊かさから言って、バーズの中でも最高峰に位置する名曲ではないだろうか。

 馬ときてもう一つ思い出すのは、ジョージの遺作である "Horse to the Water"。
 ジュールズ・ホランドのアルバムに収録されたジョージのオリジナルは、彼が亡くなる8週間前の録音。ジョージはひどく具合が悪そうで、ジュールズはレコーディングをしてもらって良いものかと思ったそうだが、オリヴィアはやらせて欲しいと言ったそうだ。
 その声は、確かに弱々しい。しかし、一方でジョージらしい茶目っ気も含んでいて、考え深い。
 ここでは、ジョージのオリジナルではなく、[Concert for George] におけるサム・ブラウンの演奏。このコンサートに出演した他の誰とも違う、躍動感とパワーに満ちた名演だ。



 改めて言うまでもないが、バックにはクラプトンにジェフ・リン、マーク・マン、アルバート・リー、ジュールズ・ホランド、ジム・ケルトナー、ジム・キャパルディ…ほかにもあれこれ、豪華すぎるメンバーが揃っている。
 私はサム・ブラウンのこのパフォーマンスにすっかり魅せられてしまい、彼女のオリジナル・アルバムの中古CDをインターネットで探し出して購入したほどだ。
 「You can lead a horse to water, but you cannot make it drink.馬を水場につれてきても、無理に水を飲ませることはできない ―」お膳立てをしても、実行するか否かは、本人次第 ― ジョージは最後になかなか含蓄のある曲を残したものだ。ちょっとひにくれた表現だが、年始には良い言葉かも知れない。

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