The Devil2013/08/03 21:59

 ディランさまラジオこと、Theme Time Radio Hour。先週のテーマは、"The Devil"。テーマこそ「悪魔」だったが、裏テーマは、ずばり "George Harrison" だったのではないだろうか。

 ロバート・ジョンソンの有名な悪魔との取引のエピソードと曲などが紹介され、やがて登場したのが、The Donays というグループの "Devil in His Heart"。60年代初頭にデトロイトで活躍したグループとのことで、知られているのはこの1曲だけらしい。



 私の認識では、もちろんビートルズのカバー。ジョージがリード・ボーカルを務めている。あちらの習慣で、歌い手によって歌詞に出てくる人の性別は変わる。



 さらに登場したのが、"Between the Devil and the Deep Blue Sea"。カウント・ベイシーのバージョンだったが、最初の録音はキャブ・キャロウェイだそうだ。私にとってはブルース・ブラザーズの映画でお馴染みのキャロウェイ。録音は1931年だというのだから古い。
 ここでは、そのキャロウェイのバージョン。



 そしてこれまた、「ジョージ・ソング」にほかならない。ジョージ最後のアルバム[Brainwashed] に収録されたジョージによるカバーは、気の合う仲間とのリラックスした雰囲気で素敵。
 ウクレレをかき鳴らすジョージを見ていると、ちょっとウルっと来る。



 ディラン様は途中で裏テーマがジョージになりつつあることに気付いたのか、それとの最初から念頭にあったのか。番組の最後には、ジョージの言葉を引用している。

 ジョージ・ハリスンの言葉。『ゴシップ、それは悪魔のラジオだ。』…さぁ、それはどうかわからないけど(I don’t know about that.)。この番組は、来週も絶対に ( sure as Hell ) 聴いて下さいね。

ジョージと同感だけれども、ラジオのパーソナリティであるディランさまとしては、「その通り!」とは言いづらく、お茶目に締めてくれた。ええ、絶対に、sure as Hell 聴きますとも!

 ジョージとは別に、TP&HBがライブでカバーした "Friend of the Devil" の、オリジナル(グレイトフル・デッド)も流れた。…が、ここはやはりTP&HBのカバーで。ベンモントのピアノがこの上なく美しい名演。

Peterson: Strobo Clip Tuner2013/08/06 21:35

 ウクレレを習い始めて1年以上。あれこれ弾けたり、弾けなかったり。
 楽器はよく考えもせずに、先生の勧める(いや、実際には先生が欲しい楽器だった)コリングスを購入。この時点で既に一生モノの楽器を手にしたらしい。
 さすがに良い楽器を持つようになると、チューナーが気になり始めた。何せこれまで使っていたチューナーは、せいぜい1200円程度の安物。KORGなのでそれなりの性能のはずだが、さすがにこれはまずい。
 そもそも、1200円のKORGを買ってから、ピッチの調整が出来ないことに気付いて驚くというお粗末な話である。ここは一つ、これまた先生のお勧めするチューナーを買おうではないか。さすがに、コリングスより高いチューナーというものはあるまい。

 その前に、私が持っているチューナーをおさらい。



 黒いのが、このたびクビになった1200円のKORG。お世話になりました。
 ピンク色の大きなものは、ティン・ホイッスル用のヤマハ。もちろんピッチの調整もできる。写ってはいないが、実は同じ物を黒でもう一つ持っている。どうして二つ持ちになったのかは覚えていない。レコスケ君キーホルダーつきのケースに入れている。
 右は音叉。440=A。これは、私が7歳か8歳のころに、親から買い与えられた物。私があまりにも音痴なのに驚いて買ってくれたのだ。これで音程が良くなったり、聴音の成績が上がるようなことは…なかった。
 ウクレレの先生は、私にお勧めのチューナーを尋ねられて、「まぁ、音叉でも」とおっしゃったのだが…いや、音叉はともかく、私の耳があてにならないのですよ。

 さて、先生はまず最初に、ピーターソンのクリップタイプを勧めてくれた。他にも何か勧められたが、ピーターソンが一番のお勧めである様子。
 よぉし、わかったぁ!ピーターソンに決定!I楽器さんのチューナー部門に乗り込み、お兄さんにいきなり。
 「チューナー下さい。ピーターソン下さい。クリップタイプ下さい。」
 そしてどーんと買いました。ストロボ・クリップ・チューナー!

 まず、イカした缶に入っている。ううむ、オシャレ!もっとも、この缶に戻すことはないが。



 ヘッドにセットしていざ、ON!
 普通、針がメーター上を左右に動いて音程を計る。針が真ん中に来れば、音が合っていると言うこと。しかし、ストロボ・チューナーは、黒い帯のような画像が左右に細かく動く…というより、回る。右に回れば音が高く、左に回れば低い。
 このイメージの動きが凄い。感度が高い。残響が下がっていくところまで出る。これは高性能。さすがに先生が勧めるだけのことはある。
 さらに良いのは、ピッチの調整はもちろん、音を合わせる楽器も選べる。ウクレレも選択肢にある。そして作りががっちりしていて、丈夫。実のところこの頑丈さは重要だ。
 これは良い物を買ったと、ニヤニヤしている。

 ピーターソンの公式動画でも、ストロボチューナーを紹介しているのだが…感度の良さはイマイチ表現仕切れていない。



 YouTubeで見つけたのが、この動画。



 アラン・ローガンが、ピート・タウンゼントのギターとピーターソンのチューナーについて語っているのだ。突っ立ってダラダラ話しているだけなのでべつにそれほど面白くはないが…。
 アラン・ローガン。高橋是清。彼がピートのギター・テックだったことにびっくり。今ではハートブレイカーズのギター・テックのアラン。私も去年、ロイヤル・アルバート・ホールのステージに姿を見た。
 ハートブレイカーズと一緒に仕事をする前では、[Concert for George] のリハーサル風景にその姿を見ることが出来る。当時はエリック・クラプトンか誰かのギター・テックだったか?
 意外なところで意外な人の来歴が気になってしまった。

The Girls of Music Videos2013/08/09 22:43

 トム・ペティのソロ・ワークで大ヒットした曲、そして今もトムさんの代表曲であり、私などはライブの際に聴けないと悲しい曲、"Free Fallin'"。そのビデオに出演していた女の子を見つけた!…という記事があった。

Tom Petty’s “Free Fallin’” Video Girl Found!

 何はともあれ、まずはあの名曲ビデオをどうぞ。



 瞳の印象的な女の子の名前は、デヴォン・キッド。Nobleman's Noblemania blog というブログのインタビューに登場したのだ。今は母親になって、コロラドでスキー・コンディショニング・コーチをしているとのこと。スケートボードではないが、スポーツ関係の職業だ。
 面白かったのは、記事の中で "Free Fallin'" の歌詞に触れていること。"It's a long day living in Reseda / There's a freeway runnin' through the yard." という歌詞があるが、正確に言うと ResedaにはFreeway は通っていないとのこと。なるほど。

 この記事の元になっているブログ、Nobleman's Noblemania Blogのブログマスター、マーク・タイラー・ノーブルマンさんは、どうやらこの手の音楽ビデオに登場した人を追いかけているらしい。あの世界一恥ずかしいミュージック・ビデオとして有名な、"Separate Ways" に登場した女性にもインタビューしている。
 そして、あの "Don't come around here no more" でアリスを演じた女性、ウィッシュ・コーエンにもインタビューをしている。これが長い!3パートに分かれているほど長いインタビューなのだ。

The Girl in the Video: "Don't COme Around Here No More"



 彼女のインタビューの場合、色々とプライベートなことなども語られている。
 肝心の、「トム・ペティはどうだった?」の質問には、「南部紳士。とても穏やかに話して、とてもシャイな感じだった。彼の態度にはびっくりしたわ。ロック・スターと言ったら、やんちゃで、ナルシストで、退廃的なエゴイストみたいな時代だったから。ペティにはそういうところが全然なかった。」…とのこと。なるほど、トムさんのイメージどおり。
 驚いたのは、その後。実は撮影中にスタン・リンチが彼女に声を掛けてきて、最終的には電話番号を聞き出し、その後5年間ほどつきあっていたと言うのだ。迂闊にも、私はこの話を全く知らなかった。
 スタンとつきあうようになって、ハートブレイカーズのツアーにも同行したし、数々の有名人(ドン・ヘンリーやら、ディラン様やら、ジョージやら…)とも会ったとのこと。
 その後、スタンとはうまく行かなくなって別れ、やがて夫となる人と出会うところまでインタビューは続いている。
 私もそれなりの期間、TP&HBのファンをしているし、それなりに詳しいつもりだったが、とにかくこの「アリス」とスタンがつきあっていたという話にはびっくり。どこかで知っていても、忘れただけだろうか?

Rain Cloud Eyes2013/08/12 21:36

 ディラン様ラジオこと、[Theme Time Radio Hour] 先週のテーマは、"Eyes"。
 ディラン様のあの瞳は色も含めて、とても魅力的ですよ。

 ビーター・バラカンさんが最後に流す、ディラン自身の曲は、"Blood in My Eyes" だったが…ディラン・ファンとすては、やはり "Sad Eyed Lady of the Lowlands" を聴きたかったと思う。超名曲・大曲…やはり11分以上という長さがネックになったのだろう。
 私はCDやMP3でしか聴かないから実感が湧かないが、アナログの時代はこの1曲だけで、[Blonde on Blonde] 2枚目B面を占めていたとのこと。…もしかしたら、この曲だけあまり聴かれなかったのかも知れない。だとしたら惜しい話で、CDやMP3でのアルバムもそれなりに良い物だと思う。

 さて、"Eyes" と来て、私が真っ先に思い浮かべる曲と言えば、ジョージの "Mystical One"。エリック・クラプトンのことを歌ったことで有名なこの曲の中でに、"That mystical one I knew is returned / Lulling me with those raincloud eyes / Taking me Melting my heart away" という歌詞がある。この "Raincloud Eyes" という表現、まさにエリック・クラプトンを表現するのに最適な言葉だ。



 ジョージの曲作りはメロディが先なのか、それとも詞が先なのか。いや、同時なのか?ジョージの歌うようなギター・ワークを思うとメロディが先に思えるのだが。ともあれ、"Mystical One" のデモ・バージョンにも、この "Rain cloud eyes" という言葉は出てくる。
 ジョージが最初からエリックを念頭に作ったのか、それとも "Rain cloud eyes" という言葉からこの長年の親友を連想したのか。私は後者ではないかと思っている。エリックをさらに直接示唆する "Shimmering slowhand "という言葉はデモにはなく、後から付け足したのではないかと思えるからだ。
 曲も、プロデューシングも完璧で、この曲はジョージの中でもトップクラスに好き。これほどの名曲が、非常に個人的なテーマで、しかも同性の友人を歌っているというのだから、やはりジョージは他の人とはひと味違う。いかにもジョージらしい。

 そのエリック・クラプトンで "Eyes" と言えば、"Pretty Blue Eyes"。私が好きな時期のクラプトンだ。



 改めて聴いてみるとヴォーカルは別に上手くもないし、曲調もヤワだが、アルバムの中において、良いバランスを取ってくれている。

 ゼム(ヴァン・モリソンのバンド)の、"Mystic Eyes" も "Eyes" の曲だが、これはTP&HBの話題の流れで上げた方が良いかも知れない。

I'm Free2013/08/14 21:43

 エドガー・ライト監督の映画 [The World's End] が見たい。
 同じくライト監督、サイモン・ペグ,ニック・フロスト出演の「ショーン・オブ・ザ・デッド」などはあまり好きなタイプの作品ではないが、この [The World's End] は面白そう。



 なんだか果てしなく下らなそうで良い。マーティン・フリーマンの使い方など 今となってはかなり贅沢ではないだろうか。
 日本で劇場公開されるかどうかは微妙。ビデオ・スルーになれば良い方だろうか。エドガー・ライトと言えば、彼がプロデューサーを務めている、[Sightseers] が日本で劇場公開になったのには驚いた。

 さて、[The World's End] の予告編で、冒頭に「三銃士」に関する会話が出てくる。そして流れる曲が、"I'm Free"。
 オリジナルはもちろん、ザ・ローリング・ストーンズ。映画で使われているのは、1990年、UKのバンド,ザ・スープ・ドラゴンのカバーバージョンだ。



 ビデオに、とても時代を感じる。これが当時の最先端だった。[The World's End] の主人公達にとって、この1990年のバージョンこそが、最初にアルコールを飲み始めた時期 ― つまり青春期に重なっており、それをなつかしのカセットテープで聴くというわけ。

 この "I'm free" という曲に関して、私は個人的ながら新たな発見をしてしまった。
 この曲がストーンズであることは覚えていたが、オリジナル録音がどのアルバムに入っているかを覚えていない。私の耳が記憶していたのは、ライブ・アルバムである [ Stripped] のバージョン。
 iPodの楽曲検索で確認してみると、どういうわけかこのライブ・バージョンしか収録されているない。ストーンズのアルバムは全て揃えたつもりなのだが。確か、1965年のアルバム [Out of Our Head] に収録されているはずだし、私もこのアルバムは持っている。
 よくよく確認してみると、なんと私が持っている [Out of Our Heads] はアメリカ版で、"I'm Free" が収録されているのは、UK版の[Out of Our Heads] だったことが判明。ジャケットは全く違うし、曲目もかなり異なっている。なんでも、発売はアメリカの方が先だったとのこと。
 そういえば、ビートルズにもUKオリジナルアルバムとは別に、アメリカ版の編集アルバムというものがあった。CD化されるにあたって、その辺りは綺麗に整理されたと聞いている。ストーンズはそうは行かなかったらしい。
 これは少なからずショック。私は完全にストーンズを揃えたつもりだったので、もう一度詳細に確認する必要にせまられてしまった。
 そのようなわけで、"I'm Free" のオリジナル録音版を、初めてYouTubeで聴くことになった。[Stripped] とはかなり異なる雰囲気で、このオリジナル・バージョンもかなり格好良い。

ようこそ、豪邸へ2013/08/18 20:08

 カントリー・ミュージックについてコメントしたトムさん、反撃も受けている模様。そりゃぁ、トム・ペティほどの大物に、自分が愛する音楽に少しでもケチをつけられようものなら、誰だった猛反撃したくなるだろう。現実味はないけれど、たとえば誰かがマイクにケチなんぞつけようものなら、トムさんが…どう…猛反撃に出るか…分からなくて怖い。

 そんなトムさんの旧豪邸が売りに出ている。お値段、約360万ドルなり。

Check Out Tom Petty's Gorgeous $3.6 Millon Home

 ご立派な御殿なのだが…あのバス・トイレ、私は無理。絶対リフォーム!日本の最高級バス・トイレを導入せねば。

 ロックスターの豪邸と言えば、なんと言ってもジョージのフライアー・パーク。とにかく豪壮で、お庭が凄くて(ジョージが庭師だった)、スタジオもご立派。
 そんなご自宅でリーズナブルにミュージック・ビデオを撮影したのが、アルバム [33 & 1/3] 収録の、"Crackerbox Palace"。監督はお友達のエリック・アイドル。出演もお友達連中。ニール・イネス、怖いよ。で、お嫁さんも凄い格好で出てくる。意外と似合う。



 それから、見逃せないのは、一瞬だけ映るエリック・クラプトン…の真似をしたエリック・アイドル(2分50秒)。その他、モンティ・パイソン・ネタ。これは一体いくつのネタが分かるでしょう!?…という競技に近い。
 私はこの時期のジョージが大好きだ。すごく幸せそうで、屈託のなさい笑顔で良い。楽しそうなジョージが、楽しい仲間と楽しく、ちょっと羽目を外しながら撮影している様子を想像するだけでも嬉しくなる。

 一応、付け加えておくが、豪邸拝見と言えば、マイク・キャンベル。マイクが自分のギターを紹介しながら語る短編動画集 [Mike Campbell: The Guitars] の最終回に登場した。そして、私が思ったのは…豪邸が…散らかっている。
 2012年8月29日 MCG:片付けさせて下さい… で記事にしているが、私は「片付けろ!断捨離だ!」と叫んでいる。まぁ、あれで部屋まで綺麗だったら、完璧な嫁すぎるよね。マイクの奥さんも、マイク自身も。

The Teddy Bear's Picnic2013/08/22 21:12

 人に教えてもらって、ニッキー・ホプキンスの伝記というものがあることを知った。最近はペイパーバックにもなっているというので、アメリカのAmazonから取り寄せた。これが一番安い。

 ところで、Hopkins という名前はどう発音するのだろうか。日本語で表記する時、人によって「ホプキン」だったり、「ホプキン」だったりするのだが。
 シャーロック・ホームズに登場するスコットランド・ヤードの若い刑事は、スタンリー・ホプキン になっていることが多いと思う。
 辞書を引いてみると、発音記号の最後は、[z] なので、おそらく「ズ」の方が近いのではないだろうか。そのようなわけで、ここでは「ホプキンズ」とする。…どうやら一般的な表記ではないようだが…

 まだ冒頭を読み始めたばかりではあるが、読みやすい文章であることは間違いない。著者は、自らもミュージシャンである、ジュリアン・ドーソン。彼がドイツなどで有名なこともあって、このニッキーの伝記も、最初にドイツ語で発売され、英語はその後になったらしい。
ニッキー・ホプキンズと言えば、ロック界でもっとも有名で有能なピアニストだろう。60年代伝説のロック黄金期からその凄腕は知れ渡っており、ローリング・ストーンズとのコラボレーションは特に有名だ。
 私にとっては、やはりジョージとの交流関係が印象深い。伝記の最後にある索引で、自分が好きなアーチストの登場箇所をつまみ食いのように読むというのは、誰でもやることだが、ジョージの場合はそれなりにボリュームがありそうなので、つまみ食い読みはしないことにした。
 意外だったのは、トム・ペティという名前が数回出てくること。彼らに交流があったことは知らなかったので意外だった。交流というか…なんと言うか…そのことは、いずれ話題にするだろう。面白いのは、同じく凄腕ピアニストである、ベンモント・テンチが何度か登場することだ。

 さっき読み始めたばかり。まだニッキーは地元の音楽コンクールで優勝などしているところ。4人兄弟の末っ子で、幼少期から病弱で、カートゥーンが得意で、ジョーク満載の手紙を書き、そしてクラシック・ピアノの分野において才能を発揮している。

 ニッキーの活躍とロックスターとの邂逅はこれからなのだが、一番最初に印象深かったのは、クラウス・フォアマンによる前書きだった。
 クラウスは、まずこうニッキーの印象を描いている。

 小柄で、やせっぽちの、青白く、感じやすそうな彼は、まるで『不思議の国のアリス』から抜け出てきたような様子で、部屋に入ってくる。ピアノの前に座ると、その指で鍵盤をさぐり、いたずらっ子のような笑みを浮かべ、やがて "The Teddy Bear's Picnic" を弾き始める。

 クラウスは短い前書きの中で、ニッキーが一緒に仕事をした人を何人か上げているが、中でもジョン・レノンと、ジョージ・ハリスンは、ファミリー・ネーム抜きで、ファースト・ネームのみで想い出の向こうを語るように述べている。
 クラウスは本当に凄い。まず絵が抜群に上手く、音楽も出来て、話しも、文章もしっかりしていて、その上ちょっと格好良い。

 私はクラウスの言う "The Teddy Bear's Picnic" という曲を知らなかった。
 もとは、20世紀初頭にアメリカで作られた "Teddy Bears' Picnic" という曲で、ビング・クロスビーなども歌っている。ここではまず、最初の録音と言われている、ヘンリー・ホールのバージョンをどうぞ。



 間奏がいやに長い。
 面白いところでは、ジェリー・ガルシアが、デイヴィッド・グロスマンのマンドリンと一緒に演奏しているもの。そういえば、私のウクレレの先生が、マンドリンのお勧めとして、ガルシアとグロスマンをあげていた。



 クラウスによると、ニッキーはこの曲を何かの合間などに、よく弾いていた。クラウスは、ジョンやジョージと一緒に過ごしたニッキーのこと、ハリー(・ニルソン)との最高にイカれた瞬間を思い出す。あの忘れがたい、"The Teddy Bear's Picnic" とともに。

One Way Ticket2013/08/25 20:26

 私は音楽好きではあるが、その一方で音楽に関する本はあまり読まない。音楽についての本は音楽そのものよりずっと魅力がないし、どうせ読むなら音楽以外の内容を読む方が効率が良くて楽しいと思っている。
 そんな訳で好きな割に私の音楽に関する知識は貧弱なものだ。ニッキー・ホプキンズの伝記を読み始めて、彼のバンドマンとしてのキャリアがかなりイロモノなバンドから始まっていることに驚き、しかもそのバンド ― Screaming Lord Sutch and the Savages は、フロントマンの、スクリーミング・ロード・サッチの名とともに、かなりの有名バンドだったのだ。後に、ジミー・ペイジや、リッチー・ブラックモアなどもバンドメンバーに加わっている。

 ニッキーは18歳ぐらいからすでに、ちょっとした有名なキーボード奏者だった。自分のバンド以外にも、セッションマンとして早くも活動している。面白かったのは、そういったセッションマンとしての仕事の時、彼のクラシックの素養が役に立ったのだということ。楽譜の読み書きが出来ない人もかなりいる中、ニッキーはそれを難なくこなして、役立てていた。
 ニッキーの幼なじみは、ニッキーの弾くショパンのノクターンが印象深かったと述べている。Eフラットと言うから、おそらく有名な第2番9-2だろう。

 ニッキーがプロとして活動を始めたのは1962年頃。まだビートルズも旋風を起こしていない頃で、ロンドンのマーキークラブには、ミック・ジャガーや、キース・リチャーズ、ジミー・ペイジなどがネクタイにカーディガン姿で聞きに来ていた。写真もある。ニッキーの背後で、かなりダサい格好のジミー・ペイジがニコニコしていた。
 ニッキーは1944年生まれだが、キャリア的にはかなり先を行っていたようだ。ただし、クローン病の発症でしばらく活動休止を余儀なくされるのだが。いま、ここまで読んだところ。

 さて、そのニッキー初期の活動で一番印象的だったのは、ケイシー・ジョーンズのセッションだ。ケイシー・ジョーンズがステージ・ネームで、一般的にはブライアン・キャッサーというそうだ。この人物はリヴァプール出身で、シルバー・ビートルズも出演したらしい(確認ができていない)ザ・カサノヴァというクラブも所有していた。  まだメジャー・デビューする前のビートルズのライバルだったようだが、レコード発売などはビートルズよりも先行しているし、ロンドンに出るのも早かった。
 そのロンドンでのレコーディングに、ニッキー・ホプキンズが参加しているのだ。この "One Way Ticket" のレコーディングに、エリック・クラプトンも参加していたというのだから、びっくりしてしまった。クラプトンはニッキーよりもさらに1歳若いはず。
 そういえば、私はクラプトンのヤードバーズ以前のキャリアを知らなかった。クラプトンはごく短期間だが、ケイシー・ジョーンズ&ジ・エンジニアーズのメンバーだったとのこと。
 まさに、これはUKロック史上、もっとも早いスーパースターのコラボレーションと言うべきではないだろうか。わくわくしながら、聴いてみた。



 ニッキーの圧勝。特にソロをあてがわれていないクラプトンは腕を披露する機会に恵まれていないのだが、とにかくニッキーが凄い。エンジニアーズの正式メンバーではないのに、完全に主役を務めている。
 恐るべし、ニッキー・ホプキンズ少年。

Harrison historical marker2013/08/28 22:15

 いよいよ、ディラン様の新しいブートレグ・シリーズ [Another Self Portrait] の発売日を迎えたが、まだ入手していない。
 ワイト島でのバンドとのライブ音声がどうしても欲しいため、デラックス4枚組が欲しいのだが、日本の各ショッピングサイトなどで国内盤を買うと20000円近くする。これは高い。ディラン様のためにも浪費は許されない昨今、輸入盤を買うことにする。
 しかし、日本のアマゾンでもお届けには1週間から3週間かかり、価格は12000円強とある。もうちょっとどうにかならないものかとアメリカのアマゾンを見ると、送料込み、1週間程度待てば10000円強で入手出来ることを発見。こちらで注文し、到着を待っているところだ。
 どうやら、ジョージとの曲というのが、"If Not for You" だけではない模様。楽しみ過ぎる。

 さて、アメリカはイリノイ州のニュースサイト、The Southern Illinoisan によると、きたる9月21日、同州のベントンという町にて、「最初にアメリカにやってきたビートル、ジョージ・ハリスンの記念碑の除幕式」が行われるらしい。

Harrison historical marker to be unveiled

 なんでも、ジョージが姉のルイーズを訪ねてこの町にやってきたのが、1963年9月のこと。今年はそれから50周年にあたり、それを記念した "marker" が作られるというわけ。除幕式には、ルイーズも出席する。
 この "marker" というものは、どの程度のものなのだろうか。「記念碑」というよりは、プレートのようなものだろうか。それとも、ロンドンにあるブルー・プラークのようなものか。
 それにしても、ビートルズの凄さを改めて思い知らされた。ジョージが個人的に休暇でお姉さんを訪ねただけで、50年後に記念碑みたいなものが出来るのだ。弘法大師みたいだな。
 1963年前半にはでにアルバム [Please Please Me] も発売されており、UKでは押しも押されぬ超アイドルだったビートルズ。そんな中、ジョージはアメリカではファンに追い回されることも無く、楽しい休日を過ごしたと記事にはある。3週間も居たというのだから、少し驚き。20歳のロック小僧が、お姉ちゃんの嫁ぎ先に3週間ものんびりしていたというのだから、さすが末っ子、行動が可愛い。
 除幕式は午後2時から。根性のあるジョージファンはぜひとも出席されたし。

 初めてアメリカの土を踏んだビートルはジョージ。…と言えば、[The Beatles Anthology] でかねがね気になっている箇所がある。
 もしかしたら、このブログで話題にしたことがあるかもしれないが…
 Vol.2 の最後で、いよいよアメリカに乗り込むことになったものの、不安と期待とが一行の心には入り交じっていたというのだが、そのときリンゴの言葉に、日本語字幕がこうついている。



 「マーティン」というのは、もちろんプロデューサーの、ジョージ・マーティンだろう。しかし、英語の字幕はこう。



 どうやら、日本語字幕をつけた人は、ジョージが1963年9月にアメリカに行っていることを知らなかったらしい。ビートルズ・ファンなら知っていそうな情報だが…。アンソロジーの日本語字幕は誰がつけたのか知らないが、ちょっと訂正しておいて欲しい箇所。せっかく、記念碑みたいなものもできることだし。

Radio, Radio / Listen to Her Heart2013/08/31 20:39

 なんとなくウクレレのカタログを眺めていたら、VOXが作ったというアンプ内蔵のエレクトリック・ウクレレ、ELEUKUなるものが紹介されていた。
 か、乾電池で…鳴る。うわぁ…いらない…。しかし、ゆるキャラには笑ってしまった。ブライニャンだそうだ。ブライニャン・ジョーンズね。なるほど。



 ディラン様ラジオこと、[Theme Time Radio Hour] のテーマは、"Radio"。
 ヴァン・モリソンの "Caravan" のオリジナルバージョンが流れて、興味深かった。しかし、この曲はなんといと言っても、[The Last Waltz] での演奏が印象的だ。
 演奏の格好良さと、ヴァン・モリソンのダサすぎるピッチピチ衣装のギャップが凄い。



 この演奏でいつもクスっと笑ってしまうのは、モリソンの衣装だけではない。曲が終わった瞬間、どうやらガース・ハドソンが終わり損ねたようで、オルガンが少しだけ鳴っているところ。

 番組の最後には、エルヴィス・コステロの "Radio, Radio" が流れた。SNLで、何の打ち合わせもなしにいきなりこの曲お歌って、番組から長い間しめ出されていたとこのと。ロックだなぁ…



 TP&HBファンだったら誰でも気付くこと。曲の終わり方が、"Listen to Her Heart" にそっくり。
 この件に関しては、トムさんがカントム(翻訳は Cool Dry Place のPart 2 you're gonna get it 参照)で語っており、コステロは、このエンディングを "Listen to Her Heart" から拝借したことを認めているとのこと。
 そのようなわけで、TP&HBのバージョン。[The Old Grey Whistle Test] での演奏。トムさんのサングラスがキマっている。



 手首までしっかりセーター?を着込んでいるマイク。ちょっと珍しいスタイル。フロリダ出身のマイクには、ロンドンは寒すぎたかな…。
 ハートブレイカーズの面々は南部育ち過ぎて、ストーブの扱いが分かっていなかった。LAに移住してから初めてストーブを扱うことになったのだが、唯一寒いところでの生活経験のあり、ストーブにも慣れているベンモントが、危なっかしい連中の取り扱いを嫌がったというエピソードが好きだ。
 ニューイングランドのボーディングスクール(UKのパブリックスクールとか、ドイツのギムナジウムみたいなところ)で中高生時代を過ごしたバンドの末っ子ベンモント、がんばれ。
 「わー!やめろ!そこに灯油入れるな!」