秋燕子 / 抜頭2013/06/03 19:54

 伶楽舎の雅楽演奏会、「伶倫楽遊」の第11回。日曜日に紀尾井ホールにいってきた。
 今回は、「正面だけど後ろの方」か、「横から斜めに見るけどまんなか辺り」という席の選択肢があり、たまには横のバルコニー席に座ってみる気になった。
 結論。やはり正面の方が良いみたい。能は脇正から見るのが好きだが、紀尾井はもともとクラシック・ホールなので正面の方が良い。バルコニーは、舞台よりも客席の方が気になってしまう。

 演目は、いつものとおり前半が古典、後半が現代雅楽曲という構成になっている。



 一曲目は「秋燕子~皇麞一具~」(しゅうえんし おうじょういちぐ)。「おうじょう」の「じょう」は、鹿かんむりの下に、「章」という、ものすごく難しい漢字。
 芝祐靖先生が、明治撰定譜に収録されている「皇麞」を大曲に構成しなおそうと、補曲した作品だ。芝先生はいつも研究熱心。
 明治撰定譜とは、明治維新の時に奈良、京都、大阪の楽人たちが東京にあつめられ、彼らがそれぞれに継承してきた曲を統一するために定められた譜面。普通、雅楽を勉強する人はこの譜面を用いるし、私も龍笛の明治撰定譜を持っている。
 先生が若かりし頃、「師匠にうっかり『この音、書き間違いでは…』と言ったところ、師匠は怖い顔をして『これが伝統なのだ、バカモノ!』と怒鳴られてしまいました」…というエピソードがプログラムに載っていた。終演後、舞台袖でご挨拶した芝先生にも、そんな時代があったのかと、微笑ましい。
 この構成のし直しはまだ歓声していないとのことで、芝先生はこの借りの「皇麞一具」を、「秋燕子」と名付けた。
 さわやかで穏やかな「遊声」がまずとても良い。そしてお馴染みの「皇麞」の「急」に向かって風のように奏でられる破、颯踏…だんだん膨らんでいく楽想が心地良い。
 やはり、古典はいい。芝先生の補曲は素晴らしい。

2曲目は、舞楽の「抜頭」(ばとう)。これまたお馴染みの曲だ。学生のころから、吹きやすいということもあって、好きな曲でもある。
 舞楽としての構成はシンプルで、軽やかな楽にのせて、勇壮な舞を観ていると、あっという間に終わってしまった。
 好きな曲というのは、すなわち名曲なのかも知れない。

 後半は、現代曲。
 感想は…あまり言いたくない。
 まぁ…興味深くはあるが。でも、やっぱり…いっそのこと、現代曲を演奏するという試みは、やめる…というのはどうだろう?
 古典楽曲が毎回素晴らしいだけに、そんな風に思わずにはいられない。