Don Giovanni2012/04/09 22:18

 ガイ・リッチー監督の映画「シャーロック・ホームズ シャドウ・ゲーム」を見た。ロバート・ダウニー・ジュニアと、ジュード・ロウ主演のこの映画、はっきり言えばアクション映画なのだが、私が好きなホームズというジャンルなので、一応確認している。
 別に「ホームズ」と銘打たなくても良さそうな内容だが、そこはある程度の「枠」があるほうが表現しやすいのだろう。
 音楽に関しては、前作からかなり凝っていて好きだ。特に、アクションシーンにアイリッシュ・ミュージックのダンス・チューンを持って来るセンスが良い。この点に関しては、また別の記事にするかもしれない。
 今回、クラシックではシューベルトの歌曲と、モーツァルトがクローズ・アップされていた。特に、オペラ「ドン・ジョヴァンニ」はオペラ座のシーンもある。実は、私が好きなオペラの一つが、この「ドン・ジョヴァンニ」なのだ。

 映画で使われたのは、「ドン・ジョヴァンニ」第二幕のフィナーレ。
 女ったらしの無法者ドン・ジョヴァンニ(イタリアで640人、ドイツで231人、フランスで100人、トルコで91人、スペインで1003人…!)が、殺した男の石像を冗談で晩餐に誘ったところ、本当に石像がノシノシと屋敷にきてしまう。この石像、ドン・ジョヴァンニに改心を迫る。それを拒否したドン・ジョヴァンニは石像に手を掴まれ、そのまま地獄へ飲み込まれてオペラはフィナーレとなる。
 「ドン・ジョヴァンニ」のジャンルはおおかた明るく楽しい、オペラ・ブッファ(「フィガロの結婚」と同じ)なのだが、この凄まじいフィナーレが強烈で、序曲から作品全体に不吉な死の臭いがまとわりつく。オペラにはいわゆる「悲劇」がたくさんあるが、「ドン・ジョヴァンニ」のフィナーレの重さは格別であり、喜劇的要素との絶妙なコントラストが素晴らしい。
 フィナーレはバージョンによってはドン・ジョヴァンニが地獄に飲み込まれたあと、他の登場人物が現れておめでたい感じで終わるものもあるが、私は地獄に飲み込まれてお終いの方が良いと思っている。
 ここでは、ドン・ジョヴァンニとレポレッロの名コンビ,サミュエル・レイミー&フェルッチョ・フルラネットに、石像はカート・モールの舞台でどうぞ。



 「ドン・ジョヴァンニ」と言えば、もう一曲。第一幕のドンナ・アンナのアリア「Or sai chi l'onore 誰が名誉を奪おうとしたか」。曲の内容は、真夜中の侵入者に父親を殺されたドンナ・アンナが、ドン・ジョヴァンニこそ、その犯人だと知り、恋人のドン・オッターヴィオにそれを告げるというもの。
 高貴で若い未婚の女性という役どころのドンナ・アンナだが、なぜかかなりの迫力をもったベテラン・ソプラノの動画がよく引っかかる。この人だったら、ドン・ジョヴァンニより強いんじゃないかなぁ…とか…。ここは、アンナ・トモワ・シントウで。



 この曲をわざわざ挙げたのは、実はこの曲をもとにしたある曲が大好きだからだ。
 1991年に、NHKで放映された「アインシュタインロマン」という科学ドキュメンタリーシリーズがあった。このメインテーマ曲になったのが、この「ドン・ジョヴァンニ」のアリアを元にしたヴァイオリン・コンチェルトで、ソロはコー・ガブリエル・カメダが弾いていた。
 この曲があまりにも素晴らしかったので、かなり苦労してサントラCDを手に入れた。YouTubeにも上がってないかしらと一生懸命探したのだが、見つからない。あんなに良い曲なのに、もったいない…
 と、思ったらニコ動の方で、妙な使われたかをしていた。とある出版社が「マンガでわかる」と題した科学系の書籍を出しているのだが、その紹介動画。音楽に、私の大好きなアインシュタインロマンのメインテーマが使われていたのだ…!

オーム社 マンガでわかるシリーズの表紙絵

 あまりにも良い曲過ぎて、オリジナルより、こっちの方が断然好きだ。演奏時間、2分30秒…ちょっと短いが、フィギュアスケートで誰かがこれを使ってくれると良いと思う。できれば表現力に長けた人で。

 ここまで書いておいて恐縮だが、実は「ドン・ジョヴァンニ」の中で一番好きな曲については今回は述べていない。オペラの全てのアリアの中でもトップクラスに好きな曲― もっとも、クラシック音楽は大して知っていないが ― レポレッロのアリア「Madamina, il catalogo è questo 奥様、これがそのカタログです(カタログの歌)」は、また別の機会に。

コメント

_ いち・オークル ― 2016/10/09 14:46

アインシュタインロマンのテーマ曲、中学生の頃にアインシュタインロマンのVHSからカセットテープに録音して聴いていました。
このブログのおかげでクリアな音声が探せましたありがとうございます!

_ NI ぶち ― 2016/10/15 17:40

>いち・オークルさん
はじめまして。お返事が遅くなってごめんなさい。ウィーンかあ帰ってきました!
おお、この曲の記事にコメントをいただけて嬉しいです。クラシックというのは、大抵オリジナルの良さがダントツなのですが、この「アインシュタインロマン」は素晴らしいですね。私はCDをゲットできてラッキーでした!
 もっと広く知られても良い曲ですね。

_ kiwantani ― 2017/03/11 19:28

はじめまして、
急に思い立って、調べてここに来ました。

ここで紹介されている、アインシュタインロマンのメインテーマが好きです。
初めは、ヴァイオリン協奏曲だと思っていましたが、違っていたのですね。

なるほど、オリジナルを聞くとヴァイオリンの演奏がオペラを意識して演奏されていたのが良く分かりますね。

_ NI ぶち ― 2017/03/12 21:08

>kiwantaniさん
初めまして、コメントありがとうございます。
良く出来たヴァイオリン協奏曲ですよね。正式には、「モーツァルト『ドン・ジョヴァンニ』のテーマによるバイオリン協奏曲」と言うそうです。篠原敬介さんの出世作ですね。
オーケストレーションも最高です。盛り上げ方、伸びやかさ、開放感が素晴らしい!

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