Bagpipes2011/10/25 21:38

 今年の文化功労賞に、雅楽の芝祐靖先生が選ばれました。おめでとうございます!先生のこれまでの業績を讃え、感謝しつつ、今後のご活躍を楽しみにしています。

   10月13日付けロイターによると、ボブ・ディランは10月上旬、スコットランドのグラスゴーでコンサートを行った際、トラディショナル・スコティッシュ・バッグパイプスを購入したそうだ。
 ナショナル・パイピング・センターのスポークスマンによると、ディランは代理人を派遣してRG ハーディ社のセットを一式購入したとのこと。マニュアルつき。
 ディランはかねてからスコットランドに強い思い入れがあり、スコットランドの詩を引用したり、民謡を取り入れたりしいる。1997年には、”Highlands”(スコットランドのこと)という曲も作った。
 記事の締めとしては、あのパイプの音と、ディランのだみ声が一緒になったら、すごいことになりそう…だとのこと。

 ディラン様、バグパイプですか!うわぁ…なんか…確かにすごそう。
 記事に出てくる「トラディショナル・スコティッシュ・バッグパイプス」というのは、「グレート・ハイランド・バグパイプ」― 日本でいわゆる「バグパイプ」と言えばまずこれが思い浮かぶ楽器のこと。英語だと「パイプス」と複数形になるのは、楽器ひとつに複数の管がついているから。
 複数の通奏管(ドローン)と、一本の旋律管(チャンター。歌担当という意味)を持つ、リード楽器。最大の特徴である大きな袋(留気袋)に、呼吸で空気をため、これを押し出して物凄い音を出す。スコットランドの民族楽器としてあまりにも有名で、その歴史・文化と深いところで強い結びつきを持っている。

 まずは、「世界チャンピオン」という人のソロ演奏でどうぞ。



 なんというかまぁ、男性的というか…。とにかく賑やか。言い換えると騒々しい(失礼)。音楽のフレーズとはまったく関係なく呼吸を送っているのだが、私にとってはこれがとてつもなく難しく思える。私は演奏と呼吸が完全に一致している楽器しかやったことがないし、ピアノを弾くときすら、ある程度呼吸を合わせている。
 これほど上手な演奏ができるまでに、どれほどの鍛錬が必要か、想像もつかない。ディランが七十の手習いでまともなパイパーになれるかどうかは…どうだろう…。別に彼自身が吹かなくても構わないのか?
 バグパイプといえば、軍楽隊にも取り入れられているわけで、集団での演奏も見もの。しかし、必然的に凄まじい音響であることは想像できる。屋外で聞くに如かず。


 バグパイプというのは広くヨーロッパに分布しており、さまざまな形があるが、スコットランドのそれと共に知名度が高いのが、アイルランドのイーリアン・パイプだろう。英語では Uilleann Pipe と綴る。アイルランド語(ゲール語)で、「ひじのパイプ」という意味。その名の通り、ひじでフイゴを操作し、留気袋に空気を送り込む構造。

 まずは、当世アイリッシュ・トラディショナル・ミュージックの雄、ルナサの演奏で、”Morning Nightcap”。



 私はこの曲を生で聴いたことがあるが、コンサートの冒頭でまずイーリアン・パイプがドローンのバルブを開けて、「ブーン…」と低く響かせたときの感動を忘れられない。この曲の収録アルバムが、私にとっての最初のルナサだったことも大きい。ホイッスル(一番左でピーピー言ってる楽器)で、この曲を吹いたこともあるが、当たり前だがこれほど上手くはない。
 ルナサはとても良いのだが、私の好みからすると、ややモダンに洗練されすぎているという感じもする。無論、ほかにはもっとゴテゴテとして、土の匂いのしないアイリッシュもあるが。ともあれ、私はザ・ボシー・バンドの方が好み。



 イーリアン・パイプはとてもやってみたい楽器だが、いつもの如く体格の問題でまず無理だろう。せめて、イーリアン・パイプと気持ちよく、楽しく合奏できるホイッスラーになる努力をしなければなるまい。