I Feel Like Playing2010/12/07 23:30

 ある程度の実力を伴ったバンドが、長続きする秘訣は何か。マイク・キャンベルは「よく分からない」と言っている。
 ストーンズにしろ、ハートブレイカーズにしろ、まず基本的にバンドという形態に対する強いこだわりが必要だろう。キース・リチャーズがストーンズ命であることは有名だし、かのトム・ぺティもバンドが好き過ぎ。
 しかし、ある程度のキャリアを積んでくると、自分のバンド以外の息抜きも多少必要なのかもしれない。フロントマン以外のメンバーも、よそで楽しく、しかもちゃんと稼ぎになる仕事をうまくこなせば、バンドの長続きに寄与するのではないだろうか。その好例がベンモント・テンチであり、マイク・キャンベルだろう。二人ともトムにとって掛け替えのない大事な存在だが、バンド外活動にも熱心だ。
 もっとも、ジョージのように自分のバンド外の方が居心地がよく、自分の実力を発揮させることに気付いてしまうと、一気にバンドから離れてしまうので、両刃の剣なのだが。要するに、事は難しいということ。

 ロニー・ウッド,そのバンド経歴は実に華麗なものがあるが、ストーンズに定着してからはずいぶん長い月日が経っている。その間も、当たり前のように素敵なソロ・アルバムを発表し続けている。今年、彼が発表したのが、[I Feel Like Playing] ― 彼はいつも、アルバムに絶妙なタイトルをつける。(某、モウジョウ…とか…どうなんだろう…)



 このアルバム、かなり素晴らしい。12曲中、10曲が共作も含めたロニーのオリジナル。その一つ一つがすばらしい楽曲なのだ。それを思うと、オリジナル楽曲に関しては、ほぼグリマー・ツインズの曲だけで構成されているストーンズは凄まじく贅沢なことをしていることになり、空恐ろしくなる。

 何といっても、冒頭の"Why You Wanna Go And Do A Thing Like That For" からして、もう反則ものの素晴らしさ。イントロを聞いただけで良い曲だと分かってしまう。非常にしっとりとした、しかもチャーミングで ― ロッドのソロ・アルバムに入っている "Mandorine Wind" に良く似た雰囲気。簡素な作りだけど、切々としていて、泣かせる。こういう曲がアルバムの冒頭というのがすごい。最後の曲に持ってきそうなものだが。
 私の一番のお気に入りは、3曲目の "Lucky Man"。いうなれば、馬鹿ロック。ひどくイカしたイントロが既にロックにキメている。ドラムが入る前に、我慢できずにヴォーカルが入ってくるような感じで、もうあとは溢れ出る、溢れ出る快感。本物のロックンローラーがそこに居るんだなと、実感させられる。コーダのシャウトの突き抜け方が愛しい。
 5曲目の "Think About You" は、最近のTP&HBにありそうな、ブルージーな格好良さ。
 他の曲の中には、非常にストーンズ的な音楽が多い。さすがに長く居ると、感染るらしい。そして最後の曲、"Forever" は、どこかジョージっぽい感じがする大作。
 このロニーのアルバムは、いったん聴き始めると、へヴィー・ローテーションになっててしまう。魅力にあふれている。やっぱりロニーは凄い。

 これほどのロッカーなだけに、いつまでも元気にロックしていてほしい。だから、プライベートや健康面でフラフラされると、不安になってしまう。良い野球選手もプライベートの面でフラフラされると、ファンとしては心配になってしまうのと一緒。とにかく落ち着いて、自分を大事にロックしてくれると嬉しい。もう21世紀なのだから。大好きだよ、ロニー。

 そう言えば、「新譜が出る。買う。」と言ったまま、その感想を述べていないアーチストが居た。エリック・クラプトン。
 …エリック・クラプトン・ファンの私としては、あのアルバムは無かった事にしたい。無論、iPodにも入れていない。どうも感想を述べるほどの内容を覚えていない。最後の「枯葉」など、早く終わらないかなと本気で思っていた。
 結局、私はロック馬鹿でしかないということだろうか。とほほ。