天使を見たかい2010/05/30 00:44

 ピアノの話。シューマンの後、またバッハを弾こうと思っていた。私はすぐにバッハに逃げる。べつに得意というわけではなく、多少の安心感があるのだ。ところが、なぜか謎のの克己心が沸き起こり、ショパンを弾くことになった。
 ショパンはこれまでにワルツ,即興曲,スケルツォ,エチュードを弾いているので、今回はノクターンに挑戦。まず、「遺作」で通っている cis moll(嬰ハ短調)。映画「戦場のピアニスト」で有名になったし、バンクーバー・オリンピックのフィギュア・スケートでも複数の選手が使っていた、超メジャー曲である。
 幸いにして、ショパンにしては技術的にはそれほど難しくなく、曲の長さも短いので、私としては助かる。無論、ショパン特有の臨時記号の多さと、独特の左手の動きには苦労するが。

 以前、NHKでシプリアン・カツァリス(1951~ フランス)の公開レッスン番組が放映されたことがある。この番組はショパンの特集だったので、この「遺作」のノクターンも取り上げられ、当時発売されたカツァリスのコメントつきの楽譜がある。
 ある個所に、こう書いてある。「天使が舞い降りてくるように」



 天使が舞い降りてくるように…?

 私は天使を見たことがない。
 ましてや、それが舞い降りてくるところなど、見るはずがない。画家のクールベが、「天使を描いてほしかったら、天使を連れて来い」と言ったエピソードがあったような気がする。
 せいぜい「木の葉が舞い散るように」くらいだったら、何となくわかるのだが。世間一般的には、天使が舞い降りる様というのは、さほど珍しくない光景なのだろうか。

 それとも、私が非クリスチャンの、日本人であるせいだろうか。そういえば、能「羽衣」のラストシーンだって、「天つ御空の 霞に紛れて 失せにけり」などと言いつつも、当の天女はスベスベと橋掛を歩いて、引っこむだけである。
 ある人が、「パトラッシュが死んじゃうところに出てくる、天使だよ!」と言うのだが、あいにく私は「パトラッシュが死んじゃうところ」とやらも見たことがない。困ったものだ。

 コメントしたカツァリス当人の演奏で確認してみる。1分14秒から始まる個所が、カツァリスが言うところの「天使が舞い降りる」ところ。



 ブレーキの具合が良くない自転車が坂をころげおちる様に聞こえなくもないが、とにかくこれが「天使が舞い降りる」というやつということで、参考にしよう。

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