ブランディ・ステーション2010/02/21 22:42

 1863年5月上旬、チャンセラーズビルでの大勝後、リーは、派手な負け続けで厭戦感が漂いつつある北部に、さらなる打撃を与え、南部連合に有利な和睦を狙おうとしていた。そのためには、シェナンドア渓谷沿いに大きく北へ回り込み、ニューヨークにまで南部からの脅威を伝えなければならない。
 リーは70000以上の戦力を再編成し、アンティータムの戦いでの敗退以来、再度の北部への積極的侵攻を試みた。チャンセラーズビル付近の樹海を抜け、さらに北西ヴァージニア州カルペパーに軍をすすめた。
 一方、大敗からの挽回を試みる北軍のフッカーは、リーの次の手がどうなるかを模索すると同時に、軍勢の再編にも手をつけた。その一つは、主力騎兵指揮官を、「無能」と言われがちなストーンマンから、アルフレッド・プレザントン少将にかえたことである。

 兵糧や物資が不足しがちな南軍だが、大勝しているうちに戦意を駆って北部へ攻め込まなければならない。そのためにも、騎兵指揮官のスチュアートは、戦闘演習も兼ねた閲兵式を行うことになった。カルペパー北側の最前線、オレンジ-アレクサンドリア鉄道のブランディ・ステーションにおいて、6月5日にそれを挙行した。
 しかしこの時、リーが出席できず、規模を縮小した閲兵式を再度、リー臨席のもと6月7日に行った。これは、派手好きで、見栄坊なスチュアートの評判を、少なからず落とした(もっとも、二回目はリーの要望でもあったようだ。リーは、スチュアートのモチベーションを高める狙いがあったのだろう)。
 北軍騎兵隊のプレザントンは、この閲兵式の情報を耳にすると、ブランディステーション急襲を決心した。

 6月9日早朝、ブランディ・ステーションに駐留していた南軍騎兵は9500。北軍11000の急襲で、南軍騎兵はどっと崩れた。最初の戦闘から離れたところに居たスチュアートは、この時すぐには状況把握ができず、かなり斥候とのやりとりで手間取った。
 騎兵同士の衝突は、通常短時間で終わりがちだが、この時は大規模な人数での衝突であり、スチュアートの配下にある指揮官たちの優秀さもあって、戦闘は異例の長さになった。南軍の中では、リーの長男のルーニー・リーが負傷し、捕虜になっている(後に捕虜交換で南軍に復帰)。
 スチュアートにしてみれば、ここで崩れ切るわけにはいかなかった。彼が任された大規模な騎兵の背後 ― カルペパーには、リーが率いる、歩兵を中心とした主力が控えているのだ。ここで踏ん張らねば、北部侵攻も何もあったものではない。
 結局、日没近くなって ― つまり、10時間以上の戦闘の末、南軍騎兵は大砲の効果的な展開で、プレザントンの北軍を押し戻した。死傷者数は北軍900,南軍500ほどだったが、南軍に都合よく判断して引き分け(無論、スチュアートは「勝った」と報告したが)、気分的には北軍の勝利が大方の見方だった。
 
 さらに重要なのはこの戦いで、これまで圧倒的優位を誇っていた南軍騎兵に対して、北軍騎兵がまともに戦えるということを証明したことだった。スチュアートの副官を務めたヘンリー・マクレラン(ジョン・ぺラムの後任。北軍ポトマック軍司令官だったジョージ・マクレランの従兄弟)は、のちにこう言っている。
 「この戦いにおける計り知れないほど重要な成果は、この戦いが北軍の騎兵を『作った』ということだ。それまで、北軍騎兵は明らかに南軍のそれよりも劣っていた。この日から、指揮官と共に北軍騎兵たちは自信を持ち、これに続く戦場において、猛烈に戦えるようになったのだ。」

コメント

_ dema ― 2010/02/22 23:19

この小戦闘は、南軍にとってはゲティスバーグ敗北への伏線とも言えるかもしれませんね。
無用な気負いでどこかに行ってしまったスチュアート、それに対して北軍騎兵部隊はゲティスバーグの序盤で実にいい働きをします。

昔、ブランディステーションのボードゲームがあって、南軍側でプレイしたことがあります。じりじり耐える展開で、北軍の歩兵部隊がいまいましかったのを覚えています。

_ NI ぶち ― 2010/02/24 23:29

>demaさん
ブランディ・ステーションの結果そのものは重大ではないのですが、南軍にとっては、ちょっとイヤァな感じなんですよね。まぁ、歴史をあとあとになって見るからそう思うのですが。
ボードゲーム?…ボードゲームって、モノポリーとか、人生ゲームみたいなものですか?(すさまじく「ゲーム」というものに弱い)

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※投稿には管理者が設定した質問に答える必要があります。

名前:
メールアドレス:
URL:
次の質問に答えてください:
このブログの制作者名最初のアルファベット半角大文字2文字は?

コメント:

トラックバック