サラサラロン毛のミュージシャン2008/08/26 22:29

 私が「格好良いと思う容姿」の細目に、金髪は含まれていない。トム・ペティが例外なのだ。彼の金髪の良さは、あの真っ直ぐサラサラ加減と、絶妙な長さ。

 色はともかく、あの手の髪型で思い浮かぶミュージシャンと言えば、フランツ・リストだ。1811年生まれのハンガリー人。生まれと父の血統こそハンガリーだが、幼い頃からウィーンに移り、その後もフランス・ドイツ語圏を中心に活躍した。それでも、リスト本人はハンガリーへの思い入れが強く、ブダペストに音楽学校を作ろうと努力を惜しまなかった。
 中年期以降、音楽史上重要な交響詩や宗教音楽を作っているが、私にとってのリストは、ひたすら青年~壮年期の「弾けないピアノ曲を書く人」である。
 演奏技術の優れたピアニストという意味では、恐らく史上最強だろう。「悪魔に魂を売り渡した」といわれたヴァイオリニスト,パガニーニに匹敵するピアニストがリストであり、その凄まじい演奏に関する伝説をあげたらきりが無い。
 当然、彼が書くピアノ曲は軒並み難曲。有名な「愛の夢」や「ラ・カンパネッラ」、「ため息」などは、ましな部類。中には、20世紀のピアニストが大真面目に「演奏不能」と診断した曲まである始末だ。
 私も高校生のときに「勉強のため」と称して「演奏会用練習曲,小人の踊り」を課題として与えられたが、結果は悲惨そのものだった。先生も「絶望的な手」の私に僅かたりとも期待しておらず、単に「ブタの踊りみたい」と評したのみだった(いや、ワニだったかな…?)。

 リストの髪型の特徴は、サイドを長くのばし、切りそろえたところ。この肖像は比較的短めの時で、もう少し長い肖像も多い。



 この容貌で超絶技巧の青年ピアニストがパリで活躍ともなれば、導き出される結果は、おのずと想像できる。彼のリサイタルではご婦人たちが熱狂し、失神するものが続出した(もっともこの時代、失神は淑女のたしなみのようなものだが)。
 そのあまりの人気は彼のピアノ・テクニック同様に度を越しており、気持ち悪い話では、ある婦人がリストの汗を香水に用いたという話まである。ビートルズ・ファンの女性としては笑えない話だが。

 リストが偉く思えるのは、彼がこの特徴的な髪型を晩年まで維持したことだ。85まで生きた彼は50歳の時に僧籍に入ったが、その宗教的信念と髪型に関連性があるのかどうかは、分からない。



 サラサラロン毛のミュージシャンをもう一人。



 なんか間違えたみたい。お互いに。